内部被曝の国際的権威 バズビー博士 避難目安 0.1ミリシーベルト

東京新聞 2011.7.20 こちら特報部

政府の被ばく規準根拠「ICRP勧告」
「恣意的で誤り」

内部被ばく研究の国際的権威
バズビー博士に聞く
年0.1ミリシーベルト避難の目安に

 福島第一原発事故の放射能汚染問題で、欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学議長を務めるクリス・バズビー英アルスター大客員教授(65)が来日し、本紙の単独インタビューに応じた。日本政府が被ばく基準の根拠にしている国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告について.「内部被ばくを考慮しておらず、恣意的な基準にすぎない」と厳しく批判した。(佐藤圭)

 バズビー氏は体内に入った放射性物質による内部被ばく研究の国際的権威で、チェルノブイリ事故の健康被害にも詳しい。ECRRは1997年、欧州議会の環境派グループ「緑の党」によって設立され、同氏は中心人物だ。今回、学校ごと疎開する措置を求めて仮処分申請した福島県郡山市の児童と生徒らを支援するため来日した。

 ―日本行きを周囲に反対されたそうだが。

 「チェルノブイリ事故で現地調査レた研究者ががんに侵されるケースがあったからだ。約二十年間、放射能による健康被害という難しい問題を見つめてきた。私が日本に来れば、福島の子どもたちの力になれるのではないかと思った」

 ―ICRPの被ばく限度は、一般人は通常年間1ミリシーベルト、緊急時は20~100ミリシーベルト。これに対し、ECRRは「内部被ばくの影響が大きい」との主張に基づき、年問0.1ミリシーベルトを超えないよう勧告している。

 「内部被ばくは、体内のDNA近くで起きるため、外部被ばくよりも低い線量で非常に高い危険性を持つ。1ミリシーベルトという基準は、外部被ばくにしか有効ではない」

―放射性物質では、文部科学省の方法では計測が難しい、べータ線物質のストロンチウムの影響を懸念しているようだが。

「ストロンチウムはセシウムと比べて格段に深刻な内部被ばくを引き起こす。だが、一般市民が検出するのは困難だ、政府が調べて、情報公開をすべきだろう」

―ECRRは、今後がん発症などの健康被害が出ると予測し、公表した。この数値はICRPの基準による試算の70倍にも上るが。

「最近二十年間で、lCRPが間違っていたという証拠がたくさん集まっている。多くの国がICRPのモデルを取り上げてきたことは事実だが、ECRRと同じ独立した第三者機関だ。1CRPに特別な地位は与えられていない」

―0.1ミリシーベルト基準を当てはめると、首都圏でも超える可能性のある地域が多い。

「国家が、避難させるかどうかについて、関心を持たなければならない数値が0.1ミリシーベルトということだ。避難が難しいとか、財源がないとかいう理由で、恣意的な基準を設けるぺきではない」

「詳細な汚染マップの作製や、第三者機関による健康影響調査、放射能に汚染されていない水や食料を確保することが必要となるだろう」

学校疎開に関する声明

バズビー氏は、「学校疎開」の仮処分申請に関して声明を発表した。要旨は次の通り。

▽外部被ぱく線量が地上1メートルで毎時1マイクロシーベルトを超える地域に住む子どもらは退避すべきだと考える

▽文科省や県などの被ばく線量の計測はセシウムなどガンマ線値であり、環境中に存在する多くのべー夕線やアルファ線が出てこない。呼吸や飲食からの内部被ばくが過小評価されている

▽原発から60キロ離れた地点での汚染レベルは、1平方メートルでセシウム137は1000~1万キロベクレル、それ以外の物質は300キロベクレルに相当する。子どもたちに何かしらの健康障害をもたらすことになり、文化社会で許されることではない

※ふくしま集団疎開裁判

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