原発の安全性を審査する経済産業省のトップが、放射線の怖さも知らないのか?
それとも、作業員の生命を軽視しているのか?
現在、福島で原発事故処理に汗を流している作業員の被ばく限度(基準)は、もともとの20ミリシーベルトから100ミリシーベルトに上げられ、更に250ミリシーベルトに引き上げられている。原発事故発生から4カ月が過ぎても収束の目途がたたない中、作業員の被曝量が増え、250ミリシーベルトを大幅に超える人たちも出ており、大変危険な状態に陥っている。
元原発作業員が損害賠償を求めた訴訟で、年間70ミリシーベルトの外部被ばくで多発性骨髄腫が労災認定されたり、5ミリシーベルトで白血病が労災認定されたケースもある。日本の原発で作業員の平均被ばく線量は、05年までのデータで1人当たり年間1・0~1・4ミリシーベルト。福島では600ミリを超える人も出ている。
「線量計つけず作業、日本人の誇り」 海江田氏が称賛
(朝日新聞 2011年7月24日0時15分)
海江田万里経済産業相は23日のテレビ東京の番組で、東京電力福島第一原子力発電所事故後の作業に関連し、「現場の人たちは線量計をつけて入ると(線量が)上がって法律では働けなくなるから、線量計を置いて入った人がたくさんいる」と明らかにした。「頑張ってくれた現場の人は尊いし、日本人が誇っていい」と称賛する美談として述べた。
番組終了後、記者団に対し、線量計なしで作業した日時は確かでないとしたうえで、「勇気のある人たちという話として聞いた。今はそんなことやっていない。決して勧められることではない」と語った。
労働安全衛生法では、原発で働く作業員らの健康管理に関連し、緊急作業時に作業員は被曝(ひばく)線量の測定装置を身につけて線量を計るよう義務づけられている。作業員らが被曝線量の測定装置をつけずに作業をしていたのなら、法違反にあたる。厚生労働省は、多くの作業員に線量計を持たせずに作業をさせたとして5月30日付で東電に対し、労働安全衛生法違反だとして是正勧告している。
最大180人、線量計持たずに作業 福島第一原発から抜粋
(2011年4月1日1時43分 朝日新聞)
東京電力福島事務所は31日、福島第一原発で作業員が受ける放射線量を測る携帯線量計の数が足りず、多い日で180人が線量計を持たずに作業していたと発表した。内規を改めてグループに1台で作業を進めてきたが、作業員が不安を訴え、他の原発から線量計を集めて全員に持たせることにした。
内部被ばく 東電、甘い計算法主張から抜粋
細川律夫厚生労働相は14日、内部被ばくが100ミリシーベルトを超えた人を作業から外すよう東電に指示したが、被ばく量の算定を巡って東電と厚労省が対立、作業員の安全を優先した対策が遅れた。
「東電は当初、内部被ばく線量を甘い方法で計算していた」。厚労省の幹部は憤る。
福島第1原発の作業員から緊急時の上限の250ミリシーベルトを超える被ばくをしたとみられる2人の存在が発覚した5月30日には、内部被ばくの線量は不明だった。線量計算を巡り厚労省は、同原発で最初に水素爆発があった3月12日を起算点にするよう東電に求めた。しかし、東電側は「いつ内部被ばくしたかは不明。3月末まで作業したなら震災当日と月末の中間の3月21日前後を起算点にすべきだ」などと主張した。
内部被ばくは「ホールボディーカウンター」という機器を使い、ある時点の線量を測った上で過去にさかのぼって総量を積算する。さかのぼる期間が長いほど積算線量は高くなるため、東電側の計算では厚労省より積算線量が低くなる。厚労省労働基準局の職員は「厳しく計算するよう説得したが向こうも譲らず、にらみ合いが続いた」と証言する。
ただ、東電の測定値は「暫定値」で、最終的な線量は放射線医学総合研究所(放医研)が精密に検査し算出する。放医研は厚労省と同じ起算点を用いて6月10日、2人の内部被ばくを590?540ミリシーベルト、外部被ばくと合わせて678?643ミリシーベルトで確定させた。
東電も最終的には放医研に合わせて計算し直して13日に同省へ報告、新たに6人の上限超えが判明した。