首相の「脱原発依存」発言を批判した広島県知事(元資源エネルギー庁 原子力産業課 課長補佐)と長崎市長発言の大きな違い

元資源エネルギー庁 原子力産業課 課長補佐だった広島県の湯崎英彦知事が、平和記念式典で「原発に依存しない社会を目指す」と表明した菅首相を批判した。一方、田上富久・長崎市長は、9日の平和祈念式典で、原子力に代わる新たなエネルギー社会への転換を訴え、再生可能エネルギーの開発に着手するよう呼び掛けた。

知事が8・6首相発言を批判 (8月10日 中国新聞)

 広島県の湯崎英彦知事は9日の記者会見で、菅直人首相が6日にあった広島市の平和記念式典でのあいさつで「『原発に依存しない社会』を目指す」と表明したことについて、「式典を政治的に利用したと疑われても仕方がない。不適切だ」と批判した。

 湯崎知事は「式典は本来、被爆者や核兵器(廃絶)について考える時間」と強調。「核兵器廃絶と方向が違う『脱原発』が注目されるのはいかがなものか。注目が集まる場で支持率上昇を狙った発言と疑われても仕方がない」と述べた。

 さらに、首相が打ち出した「脱原発依存」を「唐突だ」と批判。今後のエネルギー政策の在り方について「適切な情報開示に基づく国民的な議論が必要」と訴えた。

 湯崎知事は式典あいさつでエネルギー政策について触れなかった。「原発による放射線被害や脅威は許されることではないが、それを結び付けてしまうと『平和祈念』ではなく『脱原発』に注目されてしまうので言わなかった」とあらためて説明した。


長崎市長、原発なき社会へ転換を 被爆66年、原爆の日

66回目の「長崎原爆の日」 (長崎新聞 9日PM 8:59)

 被爆地長崎は9日、66回目の原爆の日を迎え、長崎市の平和公園では市主催の「長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が営まれた。田上富久市長は平和宣言で、放射線被害が深刻化している東京電力福島第1原発事故を踏まえ、歴代長崎市長で初めて原発の是非に具体的に言及。原子力に代わる新たなエネルギー社会への転換を訴え、再生可能エネルギーの開発に着手するよう呼び掛けた。

 田上市長は宣言の冒頭、「『ノーモア・ヒバクシャ』を訴えてきた被爆国が、どうして再び放射線の恐怖におびえることになってしまったのでしょうか。人間の制御力を過信していなかったか、未来への責任から目をそらしていなかったか…」と問い掛け、原子力依存のエネルギー社会への反省と議論を促した。

 その上で「たとえ長期間を要するにしても、より安全なエネルギーを基盤にする社会への転換」を強調。原発事故の収束と福島復興を願うメッセージを送った。

 平和宣言では、米国が新たに実施した核兵器性能実験を「核兵器のない世界」を掲げたプラハ演説に「逆行する動き」と批判。オバマ大統領を名指しし、核兵器廃絶に向けたリーダーシップを発揮するよう求めた。日本政府には「非核三原則」の法制化と、日本と韓国、北朝鮮を非核化する「北東アジア非核兵器地帯」の創設を要請。高齢化する被爆者の援護充実を訴えた。

 式典には、遺族や被爆者、菅直人首相のほか、過去最多の44カ国の政府代表が出席。在日米国大使館のジェームス・ズムワルト首席公使が米国代表として初めて参列した。菅首相は来賓あいさつで、今後のエネルギー政策について、「白紙から見直す」と表明。今回の事故を「人類にとっての新たな教訓と受け止める」とし、「原発に依存しない社会を目指す」との決意をあらためて示した。

 式典では、昨年8月2日から今年7月末までに死亡が確認された3288人の原爆死没者名簿3冊を奉安。献水、献花の後、原爆投下時刻の午前11時2分に黙とうをささげた。被爆者代表の松尾久夫さん(83)は「平和への誓い」で、家族5人を亡くしたあの日の記憶を証言し、世界恒久平和と核兵器廃絶の実現を世界の国々の指導者に訴えた。

 平和公園には、夜明け前から原爆犠牲者を追悼する市民ら約2万8千人(午前7時~午後10時)が訪れ、被爆地長崎は終日、祈りに包まれた。


長崎市長、原発なき社会へ転換を 被爆66年、原爆の日(共同通信)

原発なき社会へ転換を

 長崎は9日、被爆から66年の原爆の日を迎えた。長崎市松山町の平和公園で市主催の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典が営まれ、田上富久市長は平和宣言で「原子力にかわる再生可能エネルギーの開発を進めることが必要」と述べ、将来的に原発のない社会を目指すことを呼び掛けた

 宣言で市長は「どんな社会をつくるのか、根底からの議論と選択を」と訴えた。核兵器の非人道性も強調した。

 原発の是非に触れなかった広島市の平和宣言よりも大きく踏み込んだ。被爆地の市長が核の平和利用の是非にまで踏み込んだことは、今後の原発をめぐる議論にも大きな影響を与えそうだ
2011/08/09 11:39 【共同通信】


長崎県知事も原発について以下のように発言している。
「福島第1原子力発電所の事故は、放射線が人々の営みに与える影響の大きさを改めて知らしめるとともに、住民生活はもとより広範な社会経済活動に深刻かつ甚大な被害をもたらしております。
 私は、このような状況を目の当たりにし、これからは、福島原発の事故原因を徹底的に検証し、諸課題を明らかにするとともに、今後、私たちは、原子力にどのように向き合うべきであるのか、決して侮ることなく、真摯に議論を重ねて行かなければならないと考えております。

 そのためにも、国においては、再生可能エネルギーの利活用促進に留まらず、今後のエネルギー需給の具体策と手順を早急にお示しいただきたいと考えております。」

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