原発事故に対する外国人専門家の見方  日本は過小評価

【米国の原発専門家が緊急警告(上)】
福島原発周辺40キロの住民は避難すべきだ

(ゲンダイネット 8月16日 掲載)

土壌は300年元には戻らない
<がん患者は100万人単位で増えていく>
 アーノルド・ガンダーセン

 原子力発電に携わってほぼ40年になります。全米70カ所の原発で運営・管理した経験をもとにお話しします。まず日本の方に大変重要なことをお伝えしなければならない。それは福島第1原発の4基すべてから、いまだに放射性物質が放出されているという事実です。

 3月中旬の水素爆発で飛散が終わったと考えていたら間違いです。確かに9割はあの時の爆発で放出されたかもしれない。しかし、それで終わりではない。
 ですから環境汚染は計り知れないのです。放出を防ぐには、建屋を覆いかぶせるテントなどを使わない限り無理です。物理的に阻止できるまで、今後も数カ月間は放射性物質が飛散すると考えてください。

 もう一点、大事なことは汚染水が建屋の最下層から地中に流れ出ていると考えられることです。誰一人として肉眼で確認はできませんが、これは確かなことだと思います。炉心は溶融して格納容器の底から建屋の下にまで落ちていると考えられる。日本政府は炉心を取り出すまでに今後10年はかかると言っていますが、炉心を取り出す技術などありません。

 スリーマイル島事故の時は燃料は溶けて原子炉の底に落ちましたが、福島の場合は一番底までメルトスルーしたのです。これは建屋の下の土壌と地下水が汚染されたということで、一度高濃度に汚染された土壌は今後300年は消えません。

 周辺住民の避難指示は半径20キロでは不十分です。最低でも40キロというのが私の考えです。残念ながら日本政府はその数字を信じようとしません。悲しいことです。

 あまり煽(あお)りたくありませんが、今後10年でがんを発症する人は100万人単位になるかもしれません。最初の5年で甲状腺がんや甲状腺異常が顕著になります。次に50キロ以内の地域で肺がんの発症率が今よりも20%上昇するでしょう。この数字はノースカロライナ大学の免疫学者スティーブ・ウィング助教授が算出した数字です。そして10年で骨腫瘍や白血病、肝臓がんも増えてくると思われます。福島の現状というのはこれくらい深刻なのです。日本政府は十分にこのことを肝に銘じて、スピーディーな対応を取ってほしいと切に願います。(つづく)

▽アーノルド・ガンダーセン氏
 原発のコンサルティング会社「フェアウィンズ・アソシエーツ」チーフエンジニア。元原発関連会社上級副社長。原子力工学が専門で、スリーマイル島事故の調査でも活躍した。


欧州放射線リスク委員会 クリス・バズビー科学委員長が日本人へ警告
「ICRPの健康基準なんか、信用してはいけない」

(週刊現代 2011年8月6日号)

クリス・バズビー
「日本政府がICRP(国際放射線防護委員会)の基準を盾にとって、『年間20mSv(ミリシーベルト)までの被曝は安全』と主張しているのは、言語に絶するほど間違っている。ICRPのリスク・モデルはもともと1952年に作られたもので、その基準は軍需産業が核実験を正当化するためのものです」

こう話すのは、欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学委員長、クリス・バズピー博士である。

ECRRは、各国が放射線被曝の際の基準としているICRPのリスク・モデルを批判している科学者の団体で、両者の主張のもっとも大きな相違点は、内部被曝をどの程度リスクに織り込むかという点だ。

 ー日本政府が錦の御旗にするICRPのモデルには、どんな問題があるのか。

ひとつは、やはり内部被曝の危険性を過小評価している点です。

外部被曝と内部被曝の違いは、こうイメージしてください。石炭がくべられている暖炉の前に私が座ると、身体を温めることができます。しかし、その赤熱した石炭を食べて体内に取り込もうとすれば、どうなるでしょうか?私はすぐに死んでしまいます。それが、外部被曝と内部被曝の危険度の違いです。

われわれは現在、フクシマから100kmの地点で採取した自動車のエアフィルターを調べていますが、ストロンチウムやウランが検出されている。これらは内部被曝するとDNAに結合し、非常に危険です。

それにICRPを信用してはいけない理由があります。’09年4月、私はスウェーデンのストックホルムでICRPの最高責任者の一人であるジャック・ヴァレンティン博士に会いました。彼こそがICRPのリスク・モデルを書いた張本人ですが、彼は私に、「ICRPの内部被曝についてのリスク・モデルは間違っている」と認めたのです。彼はその際、内部被曝について「最大900倍ものエラー(過小評価)がある」と証言しています。

彼がそうした発言を始めたのは、ICRPを辞任したから。それで、ようやく「自分たちは間違っていた」と証言し始めたわけです。

欧州にも原子力ムラはある

 ーICRPや原発推進派の学者による学説を根拠に、日本でも「チェルノブイリでも大きな健康被害はほとんどなかった」と主張する専門家がいる。

そうした人々は、刑務所に送るべきです。私は個人的に、『科学的不誠実』(scientific dishonesty)という犯罪があるべきだと思っています。該当する学者は、通常の刑事裁判と同じように法廷で裁かれるべきだと思う。

チェルノブイリ事故で汚染されたベラルーシでは、5人に4人の子どもが何らかの病気に罹った状態で生まれてくるという状況です。市民の寿命は、おそらく15年は縮められたでしょう。ベラルーシでは今、多くの人々が40代でこの世を去っている。事故によって、完全に国がメルトダウンしたのです。

 ー日本には「原子力ムラ」と呼ばれる強固な原発推進勢力が存在し、一部の科学者は、彼らに買収されているとも言われている。

そういう科学者がいるであろうことは、容易に想像できます。私自身は、過去20年間にわたって独立した科学者の立場を貫いていますが、そうした科学者は非常に少ない。というのも、自分たちの研究結果を発表しようと思っても、発表する専門誌に圧力をかけられたり、研究費を削減されて研究する機会を奪われたりするからです。

ストックホルムにあるカロリンスカ研究所(医科大学)のヨハンセン教授をリーダーとする研究グループは、チェルノブイリ事故の影響とフィンランドとスウェーデンにある原発の影響を研究し始めていました。

ところが、調査を始めて数週間も経たないうちに研究費をカットされ、 ヨハンセン教授は、研究室から追放されてしまいました。

だから、私のような独立した科学者は、ほとんど残っていません。他の研究者は買収されてしまい、科学は今や、大企業の利権に左右されている状態です。

 ーあらためて、内部被曝の危険性について説明を

恐ろしいほど危険です。核種によりますが、内部被曝は、同じ線量の外部被曝に比べ、300-1000倍も危険だと考えています。たとえばストロンチウム90は、1mSvの内部被曝をすると、その影響は300mSvの外部被曝に相当します。

ここで指摘しておきたいのは、政府や東京電力が公表しているセシウムの数値だけに気を取られてはならないということです。たとえば、いまのところ日本では、誰もトリチウムという核種を測定していません。原子炉内に海水をポンプで入れると、トリチウム製造機と化します。そこから出てくるトリチウムを測定すると莫大な数字になる。おそらくここ(東京都内)の水道水にも入っているでしょう。

同じようにプルトニウムは危険ですが、それだけに気を取られてはいけない。プルトニウムは最悪の物質ではない。私の意見では最悪の核種はウランです。

広島にはウラン型原爆が落とされたが、そのあと白血病の発病率は17倍に跳ね上がりました。福島第一原発の原子炉には、数百tのウランが存在すると思われますが、現時点でも沸騰したウランが毎日大気中に漏れ出し、浮遊している状態のはずです。

都合がいい“死に方”

被曝は、“あらゆる病気″を引き起こします。免疫システムに悪影響を及ぼすので、感染症に罹りやすくなり、インフルエンザに罹っても死んでしまう可能性がある。“彼ら”にとっては都合がいいですよね。放射線が原因で亡くなったとは言わずに済むのですから。

実際には、ご存知のように甲状腺もやられてしまいます。精神疾患や子どもの知能低下、心臓麻痺など循環器系の病気、呼吸器系の病気、さらには女性の不妊や、関節炎や歯が抜け落ちてしまうといったレベルまで、様々な健康被害を発生させる可能性がある。

1カ月前にECRRメンバーの研究者が発表した論文によれば、出生児の男女比に大きな変化があったことも分かっています。つまり、生殖細胞に影響して、生まれる赤ん坊の男女比を変えてしまうのです。

さらに1kg当たり約100ベクレルの高レベルのセシウムに被曝した子どもは、心臓に問題が生じることもわかっています。不整脈が生じ、心臓麻痺を起こすのです。胃にも問題が生じ、胃壁の粘膜がセシウムに破壊されて適度な塩酸を分泌しなくなり、胃潰瘍になることもあります。ベラルーシの9歳、10歳の子どもは、老人の病気を発症しています。

 ー福島の住民および日本国民に、助言はあるか。

できるだけ遠くに逃げることしかない。しかし、逃げるにはお金が必要です。逃げた先で生活ができなければ動けない。だから政府がもっと正確な放射能汚染の測定を行い、それに基づいて立ち入り禁止地区を決め、同時にリスクについて十分な説明をするべきです。そして、政府はそのリスクに基づいて、金銭的な補償を行わなければなりません。たとえば、1ベクレルの汚染あたり、1ドルの補償を行うというような形が現実的だと思われます。


ノーベル平和賞の「社会的責任を果たすための医師団」が警告

★米国科学アカデミーによれば、安全な放射能の線量というものはない。過去数十年にわたる研究から、放射線はどんなに少ない線量でも、個々人の発がんリスクを高めることがはっきりと示されている。

★日本で危機が続く中、人に発がんの危険が生じるのは最低100ミリシーベルト(mSv)被曝したときだという報道が様々なメディアでますます多くなされるようになっている。これまでの研究で確立された知見に照らしてみると、この主張は誤りであることがわかる。100 mSv の線量を受けたときの発がんリスクは100人に1人、10 mSv では1000人に1人、そして1 mSV でも1万人に1人である。


原発事故についての重要なメッセージ2

原発事故から子どもを守りたいと思う人は、この動画を見るべきです。
「チェルノブイリ百万人の犠牲者」(TV番組)

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