福島の3号機はプルサーマル

福島の3号機はプルサーマル から抜粋
(2011/3/22 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)

福島第1原子力発電所の3号機は、大量の放水で一安心と思っていたが、21日にも従来の水蒸気ではなさそうな灰色の煙がのぼり、温度も上昇し、再び世界中の注目を集めている。今回の事態でとりわけ3号機の状況が懸念されているのは、「プルサーマル」だからだ。

ウォール・ストリート・ジャ?ナルの14日付の記事、「Officials Struggle to Prevent Meltdown at Two Reactors」では、プルサーマルは使用済み核燃料を再利用するもので、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)を燃料に加工して使うというような簡単な説明をしている。実はそのことに技術に疎い筆者はしばらく気づかずにいた。

周辺の人々に聞いても、プルサーマルという言葉の意味を漠然とは知っていても、実際にどうウラン燃料と違うのかということをきちんと理解している人はほとんどいなかった。というわけでプルサーマルについて調べてみた。

一般的な原子炉でもウランを燃料として発電する過程でプルトニウムができるが、そのプルトニウムを燃料として再利用するわけだ。

なぜプルサーマル原子炉が被災後、特に注目されているかというと、プルトニウムという金属が暴れん坊だからだ。ウランも危険だが、プルトニウムはもっと危険。ウランより融点が低く燃料溶解に至りやすく、臨界に達しやすいという。MOX燃料は放射能が強く温度が下がりにくいため原子炉が停止した後も冷却がたいへんなのだそうだ。また発がん性が高く、いったん体内に入ると排出されにくいという特徴もあるという。

日本政府は2005年に原子力政策大綱を定め、それに基づいて具体的な計画が作られた。2015年度までに16?18基の原子炉をMOX燃料で発電できるように設備を変更していくことになっている。基本的には従来の軽水炉を利用できるそうだ。

現在、東電はイギリスとフランスにウランの使用済み燃料を送り再処理をしてもらっている。国内では青森県六ヶ所村で再処理工場の建設を進めているがトラブルが続き国産化は遅れている。

各地方の電力会社は、2009年秋に九州電力の玄海発電所(佐賀県玄海町)で初のプルサーマル発電を稼働させた。次が四国電力の伊方発電所(愛媛県伊方町)、そして昨年10月に東京電力の福島第1発電所、さらに12月には関西電力の高浜原子力発電所もMOX燃料による発電を開始した。

しかしプルサーマルに限ったことではないが、日本国民の多くがこれまで原発を容認してきたのは、あくまで原発技術は安全だと信じていたからだ。何重にも安全対策を講じているから大丈夫と言われ、事故は絶対に起きないとは言われて“いなくても、”起きないと信じて原発建設を許してきたのだ。

未曾有の地震と津波の襲来に対し原子炉はしっかりと自動停止した。だが、原子炉は停止したら安心なのではない。熱を発し続ける燃料棒を長い時間を掛けて冷やさなければならない。その冷却機能が落ちると、いくら原子炉が停止しても広い範囲に大量の放射性物質をばらまくような大事故につながりかねないのだ。WSJでは「過去にもトラブル続きだった福島第1原発」という記事で、定期検査で稼働を停止していた原子炉でさえ、プールに移していた燃料棒が過熱して火災になるほど原発で冷却機能が失われることの影響が大きいことを指摘している。プルサーマル発電では、冷却機能が失われたときの危険性が既存のウラン燃料による発電所よりも高い
(後略)

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