水木しげるさん描く32年前の福島原発 「原発、オソロシイですね」

水木しげるさん描く福島原発 32年前のイラスト出版へ
(8月16日19時51分 朝日新聞)

 妖怪マンガで知られるマンガ家の水木しげるさんが32年前、福島第一原発を描いていた。当時、雑誌「アサヒグラフ」に書き下ろしたイラストで、作業員の過酷な労働や、ずさんな管理態勢を迫力ある筆致で表現している。「福島原発の闇」(朝日新聞出版)として初めて単行本化、19日発売される。

 イラストは、米スリーマイル島事故が起こった1979年の同誌10月26日号、11月2日号に「パイプの森の放浪者」の題名で掲載された。下請け労働者として原発に潜入し、ルポ「原発ジプシー」を著した堀江邦夫さんが文章を書き、水木さんが絵をつけた

 絵を描く前に水木さんは堀江さんと共に、福島原発の近くまで赴き、外観を見学。堀江さんの話などをもとにイメージをふくらませた。重装備でタンクのヘドロをくみ出す労働者の姿や、タービン建屋に巡らされた配管など、綿密な書き込みで、現場の緊張感や重苦しい雰囲気を伝える。

 当時の担当編集者によると、水木さんは原発で働く労働者の姿に、戦争で末端の兵士だった自分を重ね合わせていた様子だったという。水木さんは今回の刊行に当たり、「32年前のことは忘却のかなたですが、原発、オソロシイですね」とコメントした。(宮本茂頼)

「はだしのゲン」の中沢啓治 「原発、こんな恐怖が」
(2011年8月2日 朝日新聞)

 「はだしのゲン」の漫画家、中沢啓治が原爆体験を語ったドキュメンタリー「はだしのゲンが見たヒロシマ」(石田優子監督)が6日から東京・オーディトリウム渋谷で公開される。被爆の苦しみを知り尽くす中沢に、福島第一原発の事故はどう映るのか

 映画で中沢は、原爆投下時や直後にいた広島市内の各所をめぐり、父や姉弟らを失った様子を生々しく語る。漫画家を目指して上京し、被爆者として差別された体験にも触れている。

 「原爆に遭ったと東京で言った時、向けられた冷たい目つきが忘れられない。放射能はうつる、と思われていて、これが唯一の被爆国か、と腹が立った」

 この体験は現在の原発事故と重なり合う。「『フクシマ』だからと差別する子がいるみたいだけれど、変なうわさは広がる。親も先生も事実をきちんと教えるのが役割なのに情けない」

 チェルノブイリを訪れたこともある中沢は、原発にはかねて批判的だった。「人間が制御できるものではない。まして地震列島の日本でこんな恐怖があるのか、と思っていた」

 原爆投下後、中沢は郊外に逃げ延びた。元気だった近くの人々が市街に入り、戻ってくると血をはき突然死んでいく姿を目にした。「黒い雨が降って放射能が強い場所ができていた。目に見えない、触ることもできないものが体を侵していく。今の状況と似ている」

 視力が衰えて漫画執筆は断念し、肺がんも患ったが「まだ口はきける」。これからも体験を伝え続けたいという。(宮本茂頼)

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