7月15日に発行された小出裕章さんの「原発はいらない」を読んで衝撃を受けた。
序章
福島第一原発の暴発は防げるか
綿々と続く被曝覚悟の大工事 から抜粋
(要約:建屋内の空気を浄化するフィルター工事、格納容器の底に溜まった汚染水を循環させるための配管を設ける作業、水位を測る計測器の調節など)作業員の多大な被曝があって初めて、最悪の事態が防げているのです。本当にありがたいと思います。下請け、孫請け会社の社員だけでなく、東京電力の社員、日立、東芝など原子炉メーカーの社員も建屋の中に入っているはずです。彼らの苦闘が実を結ぶことを願います。
ついに立ち上がった技術者OBたち
元住友金属工業の技術者だった山田恭暉さん(72歳)が、「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」を立ち上げ、次のような呼びかけを発表しました。
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「福島原発 暴発阻止行動 プロジェクト」結成へむけて
福島第一原子力発電所の現状についてはいまさら説明するまでもありません。しかし確認しておかなければならないことは、次の事実です。
1 暴発を防ぐためには、ホースによる散水のような一時的な処置ではなく、10年の単位の時間安定して作動する冷却設備を設置し、これを故障することなく保守・運転し続けなければならない。
2 この冷却設備の建設・保守・運転は、すでに高度に放射能汚染された環境下で行わざるを得ない。
3 もし、安定した冷却設備を建設・保守・運転できなければ、3000 万人もの人口を抱える首都圏をも含めた広範な汚染が発生する可能性がある。
このような最悪のシナリオを避けるためには、どのような設備を作ることが必要か、放射能汚染を減らすためにどうしたらよいか、などなど、数多くの技術的課題があることはもちろんです。この点についても日本の最高の頭脳を結集した体制ができていないことは大きな問題です。さらにもう一方では、最終的に汚染された環境下での設備建設・保守・運転のためには、数千人の訓練された有能な作業者を用意することが必要です。現在のような下請け・孫請けによる場当たり的な作業員集めで、数分間の仕事をして戻ってくるというようなことでできる仕事ではありません。
身体の面でも生活の面でも最も放射能被曝の害が少なくて済み、しかもこれまで現場での作業や技術の能力を蓄積してきた退役者たちが力を振り絞って、次の世代に負の遺産を残さないために働くことができるのではないでしょうか。
まず、私たち自身がこの仕事を担当する意志のあることを表明し、長期にわたる国の体制として退役した元技能者・技術者のボランティアによる行動隊を作ることを提案し要求していきたいと思います。
当面次のことを提案します。
4 この行動隊に参加していただける方を募集します。
原則として60 歳以上、現場作業に耐える体力・経験を有すること5 この行動隊を作ることに賛同し、応援していただける方を募集します。
(原文のまま)————————————–
衝撃を受けたのは、このあとの文章である。
40年間、原子力の研究をし、放射能の怖さを知り尽くし、原発に反対し続けてきた小出さんが、次のように書いている。
これからの作業には、どうしても人手が必要になります。しかし、限られた若い作業員だけに大量の被曝をお願いするのは非道というものであり、また技術者OBであれば、慣れない作業員より効率的に働けるかもしれません。
私は山田さんのプロジェクトに賛同しました。このプロジェクトは東京電力から拒否されたようですが、事故収束を図る東京電力の苦境が深まる中、実現の可能性も見えてきています。実際、5月末には細野剛志首相補佐官(現・原発事故収束・再発防止担当大臣)と山田さんらが会談し、今後のことについて語り合ったそうです。プロジェクトが現実に動き出す可能性が出てきました。
このプロジェクトは、別名「シニア決死隊」とも言われているそうですが、呼びかけ人の山田さんに気負うところはなく、「合理的に考えたら、経験のある技術者の自分たちが行くべきではないかと思います。死ぬ気はありませんが、あとの世代を生かすために行くつもりです」と淡々と語ります。
前述しましたように、私は原子力に携わってきた人間として、福島第一原発事故の責任の一端は負わなければならないと思っています。事故の収束に向けて自分にできることがあれば担いたいと思い、プロジェクトに参加することにしました。私も60歳をすぎて、放射能感受性がとても低くなっていることも、参加理由の一つです。
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※高齢技術者「若い奴にはやらせない」原発暴発阻止プロジェクト
(2011/4/22 週刊金曜日)