福島原発事故 3月17日
原発「津波に耐え素晴らしい」 原子力行政「胸を張るべきだ」 経団連会長が発言
(2011/03/17 10:55 北海道新聞)
日本経団連の米倉弘昌会長は16日、東京都内で記者団に対し、福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、国と東京電力を擁護した。米スリーマイルアイランドの原発事故を上回る重大事故との見方が強いだけに、発言は波紋を広げそうだ。
米倉会長は事故は徐々に収束の方向に向かっているとし「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」と発言。「政府は不安感を起こさないよう、正確な情報を提供してほしい」と話した。
一方、日本商工会議所の岡村正会頭は同日開かれた定例会見で「放射能の放出は、国民が最も不安を抱く。正確かつ迅速な情報提供を望む」と要望。その上で「原発の建設基準を向上させるしかない。見直しの期間だけ、(建設が)延伸されることは当然起こりうる」と述べ、今後もエネルギー供給の一定割合は原発に依存せざるを得ないとの認識を示した。
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【インタビュー】東電は甘くはなかった=経団連の米倉会長
(2011年4月6日 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)から抜粋
WSJ:当局への不信が国民にみられる。東電の責任問題、情報公開問題はどうか?
米倉氏:一生懸命やっている。考えられていないが、東電自体が被災者だ。従業員が津波に流され、機器も津波に流されているところがある。そういったなかで一生懸命努力をしている。政府としては、東電が最大限努力しやすいような環境を作るべきだと思っている。いろいろ見ていると、政府の内部で考え方が食い違ったりしており、非常に憂慮している。
WSJ:東電は甘かった?
米倉氏:甘かったということは絶対にない。要するにあれは国の安全基準というのがあって、それに基づき設計されているはずだ。恐らく、それよりも何十倍の安全ファクターを入れてやっている。東電は全然、甘くはない。
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経団連会長、首相の手法を強く批判「パフォーマンスにほかならない」
(2011.5.9 18:02 産経ニュース)
日本経団連の米倉弘昌会長は9日の会見で、菅直人首相が中部電力浜岡原発の全原子炉停止を要請したことについて「唐突感が否めない。自分の意見を発表してから中電に説明するという手順は政治的パフォーマンスにほかならない」と厳しく批判した。
米倉会長は「原発を停止するかどうかは中電の判断だが、中電は首相要請ではなく命令だと思っているのではないか」と指摘。「本来は原子力安全・保安院と知見やリスクについて科学的に検討したうえで論議して決定すべきもの」と述べたうえで、「原発に対する一連の政府の対応は極めて拙劣だ」と切って捨てた。
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<元東電副社長で、経団連が支援して国会議員なった人の発言>
原子力の選択肢を放棄するな
東電顧問・元参院議員 加納時男氏
2011年5月5日 朝日新聞 朝刊4面
地元が要望 雇用に貢献
──福島の現状をどう感じていますか。
「東電出身、元国会議員として二重の責任を感じている。インターネット上で『お前は絞首刑だ』『A級戦犯だ』と書かれてつらいが、原子力を選択したことは間違っていなかった。地元の強い要望で原発ができ、地域の雇用や所得が上がったのも事実だ」
──原発推進のため国会議員になったのですか。
「そうではない。当時財界と自民党との間に溝があり、経団連は財界の声を反映させたかった。特定の業界のために仕事をしてきたわけではない」
──電力会社役員から個人献金を受け、自民党が原子力政策に甘くなったことは。
「お金をもらったから規制を緩くしたとか、そんなことはない」
──河野太郎氏は「核燃料サイクル」政策は破綻していると主張しています。
「反原発の集会に出ている人の意見だ。自民党の意見になったことはない。反原発の政党で活躍すればいい。社民党に推薦しますよ。福島瑞穂党首は私の大学の後輩だから」
──今後も原発を新設すべきでしょうか。
「太陽光や風力というお言葉はとってもロマンがある。しかし、新増設なしでエネルギーの安定的確保ができるのか。二酸化炭素排出抑制の対策ができるのか。天然ガスや石油を海外から購入する際も、原発があることで有利に交渉できる。原子力の選択肢を放棄すべきではない。福島第一原発第5、6号機も捨てずに生かす選択肢はある」
低線量放射線、体にいい
──東電の責任をどう考えますか。
「東電をつぶせと言う意見があるが、株主の資産が減ってしまう。金融市場や株式市場に大混乱をもたらすような乱暴な議論があるのは残念だ。原子力損害賠償法には『損害が異常に巨大な天災地変によって生じたときはこの限りではない』という免責条項もある。今回の災害があたらないとすると、一体何があたるのか。全部免責しろとは言わないが、具体的な負担を考えて欲しい」
「低線量放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。説得力があると思う。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った。過剰反応になっているのでは。むしろ低線量は体にいい、ということすら世の中では言えない。これだけでも申し上げたくて取材に応じた」
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1935年生まれ。元東京電力副社長。98年参院選比例区で日本経団連が支援する「財界候補」として当選、2010年まで2期務めた。現在は東電顧問。
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<元自民党総裁で、日本に原発を導入した人の発言>
元首相・中曽根康弘 場当たり的な「政治決断」から抜粋
(2011.5.13 産経ニュース)
菅直人首相は、6日に中部電力浜岡原子力発電所の全面停止を求め、中部電力も3日後に応じた。10日にはエネルギー政策を白紙に戻すとも表明した。菅首相の「政治決断」に一応の支持と評価はするが、関係機関や与党の了解を取る手続きは取ったのか。原子力を含むエネルギー問題は手続きを慎重にすべき対象だ。
浜岡原発の停止については、エネルギー政策上の原子力発電の意義を明確にさせないままの応急手当て的な処置だったのではないか。政府・与党の基本的姿勢が問われるだけに、「決断」は疑問を持たせたと言わざるを得ない。
東京電力福島第1原子力発電所の事故においても同様で、事故をどう反省し、是正していくかという立場で関係者間で協議していくべきものだ。このままだと、政治史の上でみても、場当たり的な人気取りのエネルギー政策に終始したとの批判は免れないだろう。
私の科学技術や原子力問題への関心のきっかけは、義父の地質学者から日本のウラニウム埋蔵の可能性や核分裂理論を聞かされたことと、広島に投下された原爆の雲を高松から見たことだった。
昭和29年、ハーバード大のゼミに出席するため訪米した。当時の米国は、アイゼンハワー大統領が「アトム・フォー・ピース」を提唱して、原子力を軍用から平和利用に移行させる動きが出てきた。日本が敗戦から立ち直るのにエネルギー問題は避けられない課題であり、日本で原子力の平和利用を急ぎ進めなければならないと判断した。
炉の見学などを通じて、このようにやれば原子力も安全だという確信を持つと、帰国後に同志を募って推進を始めた。その後、社会党左派まで賛同する超党派の動きになり、議員立法で出した原子力基本法は昭和30年に成立の運びとなった。
日本のエネルギーは今後、風や波や太陽光など自然力への比重を増していくだろうし、それは推進すべきだ。しかし、効率性や日本の科学技術力などを考えると、代わりのものを入手しない限りは原子力に頼らざるを得ないのではないか。
今回の原発事故は、津波と地震による複合的な災難であり、今までの想定を超えた問題だった。ここで反省すべきは、「想定」を設定していいのかということだ。人智による想定に自然は従わないとの立場から、想定を超えた対策を練り直していく必要がある。新設の原発を海辺に築くのは、もはや難しい。いかに防潮堤を高くしても、津波が乗り越えることはないという保証はないからだ。いかなる津波も届かないという安全な場所に設置するくらいの基準を作らないといけないだろう。ある程度のコストをかけても、安全運転のためにはやむを得ない。