日本原子力学会:「安全責任、認識薄い」参加者から批判も

「徹底的な原因追究と自己批判を重ねて教訓を共有すべきだ」といった声もあがっているが、「徹底的な原因追究」ができていない中で、今も稼動を続ける原発を停止すべきだとの声は上がっていない。

日本原子力学会:「安全責任、認識薄い」参加者から批判も――北九州市で
(毎日新聞 2011年9月20日 地方版)

 「学会は本当に福島の事故を反省しているのか」――。3月の東京電力福島第1原発事故の発生後、初めての大会を北九州市で開いた日本原子力学会(田中知会長)。4日間の日程初日の19日にあった同事故に関する特別シンポジウムでは、研究者からは「事故の教訓」に触れる発言があったが、一般参加者からは「責任転嫁だ」と批判の声も上がった。【阿部周一、内田久光】

 福島第1原発周辺の現状報告に続くパネル討論では、原子力学会員の十数人が壇上に立ち、「福島の事故に対して何ができ、何をするべきか」をテーマに議論。若手研究者からは「今回の事故で想像力の大事さを痛感したと思う。これからは学会内の自由な議論が必要だ」「原子力の安全がどうあるべきか、国にも恐れず物を言っていくべきだ」という意見が出る一方、幹部からは「学会は権力も権威もお金もなく、活動に限界がある」と消極的な意見もあった。

 会場の約500人のうち約60人は一般からの参加。博多区から足を運んだ70代の男性は「原子力の安全に責任があるという認識が薄く、事故を防げなかったという反省が感じられなかった」と厳しい口調で語った。

 一方、開会前には反原発派団体「原発の廃炉を求める北九州市民の会」の約20人が会場入り口前で「原発推進の基本姿勢を改めることを求める」などと書かれたチラシを配った。メンバーの伊藤莞爾さん(71)は「政府や東電と一緒に、あれだけの事故を起こした責任が学会も問われるべきだ」と話した。

〔福岡都市圏版〕

原子力研究者自ら反省の弁 「福島」後初の学会
(2011年9月20日 西日本新聞)

 原子力分野の研究者でつくる日本原子力学会(会長=田中知(さとる)・東京大大学院教授)の秋の大会が19日、北九州市小倉北区の北九州国際会議場で始まり、東京電力福島第1原発事故に関する特別シンポジウムを開催した。講演者の多くが、研究者として同事故を防げなかった責任に言及。併せて原発の安全性を向上させるための新たな対策を提言した。

 大会は毎年春と秋に開催。今年は同事故発生により、春の開催を中止しており、今回が事故後では初めて。22日まで。

 シンポでは、津波により、炉心損傷などの重大事故が起きる危険度を、各原発ごとに確率で示す手法を年内にもまとめる学会の方針を公表。電力会社や国が実施する新たな安全評価や、国の耐震指針見直しに反映してもらう考え。

 シンポには原子炉工学や放射線管理などの研究者や実務者が登壇。田中会長は冒頭、「(事故の)環境修復と避難住民の帰宅実現に貢献したい」とあいさつした。

 二ノ方寿・東京工業大大学院教授は「徹底的な原因追究と自己批判を重ねて教訓を共有すべきだ」と強調。パネル討議でも「自動車業界のような『カイゼン』を止めたことが反省点」(岡本孝司・東京大大学院教授)など、自らの責任を問う意見が続いた。

 その上で、国内外の原子力研究者が事故の教訓を共有する「福島第1国際協力研究所(仮称)」開設を求める提言のほか、汚染水やがれき処分などの放射性廃棄物の処理に新たな評価基準が必要と指摘する声もあった。

 北九州市での開催は2007年以来。19日は一般聴講者を含め約500人が参加。20日以降、津波評価や新型炉開発などの専門部会が開かれる。

=2011/09/20付 西日本新聞朝刊=

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