玄海原発 「やらせ」の根は深かった
(11月25日 信濃毎日新聞)
九州電力玄海原発のプルサーマル導入をめぐり佐賀県が2005年に開いた公開討論会で、九電が社員による賛成の「仕込み質問」を用意していたのを、佐賀県が事実上容認していた。県の内部調査の結果である。
玄海原発をめぐっては、再稼働に向け国が今年6月に開いた県民向け説明番組で「やらせメール」が発覚している。
九電が設けた第三者委員会は9月末の報告書で、05年の討論会がやらせメール問題の“原型”になったと指摘している。
民意を確認する公開の場である。仕込み質問が出ると知っていたなら、なぜ主催者として止めなかったのか。原発の安全性の議論をゆがめた県の責任は重い。
内部調査にあたった牟田香副知事は会見で、仕込み質問について「討論会の趣旨を損なうものではなかった」としている。認識が甘すぎないか。
九電第三者委の報告書などによると、九電は県の求めに応じパネリスト候補者の資料やシナリオ案、進行台本を提供していた。
当日の一般参加千人のうち7割弱が九電関係者。質問コーナーは最初の3人すべてが「仕込み」でほぼ九電の台本通りに発言。賛成の立場から質問した8人のうち、7人が「仕込み」だった。
討論会後に放送されたラジオ番組で、古川康知事は「安全派の説明に説得力があったと思う」と評価している。翌06年、全国で初めてプルサーマルに同意した。知事の判断の妥当性が問われる。
内部調査が尽くされたとは言えない。たとえば、知事をはじめ県の関与はなかったとしたが、当事者の証言が根拠という。
県の調査は、九電が10月に経済産業省に提出した報告書に依拠している。だがこの報告書自体、第三者委の調査結果を都合よくつまみ食いし、あとは黙殺したもの。枝野幸男経産相に批判され再提出を求められている。
使用済み核燃料を再び原発に使うプルサーマルは、安全への懸念から賛否が分かれる。そのなかで電力会社や国、自治体が原発推進の世論を偽装してきたことが相次いで明らかになっている。
北海道電力泊原発のシンポジウムでもやらせが発覚し、第三者委は道課長の関与を認定した。
やらせや仕込みは、原子力界の体質的問題ととらえるべきだ。実態を徹底して解明し、説得力ある再発防止策を示さなくては、信頼回復はおぼつかない。佐賀県をはじめ関係者は胸に刻んでほしい。