格納容器コンクリ65センチ侵食 福島原発1号機燃料
(’11/12/1 中国新聞)
東京電力は30日、福島第1原発1号機で事故により溶融した燃料は、もともとあった原子炉圧力容器から外側の格納容器に漏れ、底にあるコンクリートを熱で分解しながら最大65センチ侵食したとの解析結果を発表した。最も厳しい想定では、格納容器の外殻に当たる鋼鉄の板まで37センチに迫っていた。
2、3号機でも、比較的小規模だが同様の事態が起きた可能性があると推定。現在は注水によって侵食は止まり、燃料は格納容器内で冷却されているとしている。
高温の燃料が格納容器を突き破り、外部に漏れ出ていく事態にはならなかったとの結果だが、事故の深刻さをあらためて示した。
東電の松本純一まつもと・じゅんいち原子力・立地本部長代理は、侵食されたコンクリートについて「何かを支える部材ではなく、問題ない」と説明。また「(燃料は)全体的に冷えている」と述べ、年内を目標とする原子炉の冷温停止状態達成の判断には影響しないとの見方を示した。
解析では、3月11日に地震、津波に襲われた後に冷却機能が失われた影響で燃料が溶け、最も多い場合、1号機では100%、2号機は57%、3号機は63%が格納容器まで落下したと想定。
1号機では圧力容器が大規模に破損、2、3号機では大規模な破損は起きていないとみて評価した。1号機ではコンクリートにある溝の最も深い部分から最大65センチ、2号機では同12センチ、3号機では同20センチの侵食が起きたとしている。
1号機の損傷が2、3号機より激しいのは、事故後に原子炉へ注水できなかった時間が長かったためとみられる。
松本本部長代理は、解析は余裕を持たせた評価だと強調。「現実には(格納容器に落ちた燃料は)より少ないと思っている」として10?20ポイント程度低いとの見解を示した。
今回は将来の燃料取り出しや、事故当初の近隣住民の被ばくの状況推定などに向け、これまでに得た温度や圧力などの値から解析した。今後、炉内の様子を直接調べる方法も検討するという。
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≪「重要だ」「実態不明」 見解割れる専門家≫
(2011/12/01 09:24 SANKEI EXPRESS)
1号機で溶け落ちた燃料が格納容器の底にあるコンクリートを最大で65センチ侵食したなどとする東電の解析結果について、「重要な情報」「解析だけでは実際のことは分からない」など専門家の見方は割れた。
日本原子力研究開発機構安全研究センターの渡辺憲夫研究主席は「解析は、モデルや前提条件が変われば結果も変わる。実際に燃料とコンクリートの反応が起こったかどうかは分からない」とあまり重要視しない姿勢。複数のモデルで解析しなければならないと指摘した。
■廃炉へ燃料取り出し難航も
ただ今後予想される廃炉に向けた燃料取り出しについて、渡辺研究主席は「格納容器側に燃料が落ちているとすると、作業は難航する」と懸念を示した。
一方、「ある程度、炉の中の状況が見えてきた。冷温停止状態の判断や燃料の取り出しに向け、重要な情報だ」と評価するのは、東京大の岡本孝司教授(原子炉工学)。ただ、岡本教授も「解析作業は始まったばかり。今後、オールジャパンで進めなければならない」と話し、炉内の状況を正確に知るには、より詳しい解析が必要だと強調した。
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炉心損傷の詳細解析結果は… 燃料落下も冷却は維持
(2011/12/01 電気新聞)
東京電力が30日公表した福島第一原子力発電所1~3号機の炉心損傷状況の詳細な解析結果――。1号機では燃料が完全に溶けて大部分が格納容器内の原子炉本体基礎(ペデスタル)まで落下しているとの推定を示したほか、2、3号機でも溶融した燃料の一部は格納容器へ落下していると評価。5月に推定した炉心状態よりかなり大きな損傷の実態が明らかになった。確認された現場の状況から、現在は各号機とも十分に冷却されていると見られ、東電は「圧力容器、格納容器全体が冷えているという見解は以前から変わりない」と説明している。(古川 愛弓)
圧力容器内の状態については、原子炉トラブルの解析コード(MAAP)を用いた解析のほか、注水実績、温度評価モデル、水位計指示値に基づく推定を行った。
解析の結果、1号機は地震発生から約15時間後には燃料が完全に溶け、下方にすべて移動したと評価した。1号機は2、3号機に比べて注水できなかった時間が長く、海水が注入されるまでの間、原子炉で発生した崩壊熱量が圧力容器内の水や構造材で吸収可能な除熱量を大きく上回る状態だったためだ。
高温で溶融した燃料は圧力容器下部に移動した後、圧力容器を損傷しながら相当量が格納容器に滴下したと推定される。
1号機では4月上旬から原子炉の温度が下がり始め、2、3号機で見られたような温度計指示値のふらつきはほとんどなく、一様に低下した。8月には圧力容器底部の温度が100度を下回り、10月に注水量を増加させると急速に冷却が進んだ。このことからも、損傷燃料は既に格納容器に落下しており、圧力容器内には発熱体が少ない状態と推定できる。
2、3号機は水位計のの不確かさを考慮した保守的なケースと水位計指示値を基にしたケースの2通りで解析を実施。保守的な推定の場合、地震発生後100時間前後で燃料の大半は圧力容器下部に溶けて移動したと評価した。水位計の指示値が正しい場合、燃料は損傷するものの、ほとんどは元の炉心位置に残っていると推定。東電は「現実にはこの2つのケースの間ではないか」としている。
2、3号機はで注水が停止している間の崩壊熱量は圧力容器内の水の蒸発で吸収できる程度だったため、多量の燃料が格納容器の底部に滴下するような大きな損傷は生じていないと見られる。炉心スプレイ(CS)系を使ってシュラウドの内側に直接注水を始めた際の温度低下傾向から見ても、2、3号機の損傷の程度は1号機より小さく、燃料の大半は圧力容器内に存在していると推定される。
MAAP解析で得られた各号機の炉心落下割合は、最も保守的な値で1号機で100%、2号機で57%、3号機で63%。特に1号機の損傷が大きい点について、東電は「津波の影響の度合いが各号器で少しずつ異なる。1号機では直流電源を設置しているバッテリー室が浸水し、津波の来襲とほぼ同時に高圧で原子炉に注水できる手段を喪失したことが損傷の早さにつながった」と説明した。
格納容器内の状況については、ペデスタルにたまった燃料がコア・コンクリート反応を起こした可能性があることから、燃料の落下量や体積状況を保守的に仮定してコンクリートの浸食量を推定した。
解析の結果、燃料の落下割合が最も大きい1号機では燃料が堆積する厚さが81センチメートル、コンクリートの浸食深さが65センチメートルと評価した。コンクリートの厚みは最も薄いところで102センチメートルあるため、格納容器鋼板まで最大37センチメートルの部分まで浸食が進んでいる可能性があるが、浸食は格納容器内にとどまり、ペデスタルの構造健全性も確保されていると見ている。
コア・コンクリート反応ではCO2(二酸化炭素)が発生するが、格納容器内のガスに含まれるCO2の濃度はコア・コンクリート反応で発生する気体発生割合とは異なっているため、現在でもコア・コンクリート反応が継続していることはないと結論づけた。
現時点の原子炉については、1号機は格納容器の床面から30~40センチメートル程度が水に浸かっている状態で、燃料はその中で十分に冷却が成されていると見ている。3号機は格納容器のフラスコ部分のほぼ半分あたりに水位があると推定される。2号機は格納容器内の水位がはっきりしないが、およそ1、3号機の間にあるものと見られる。
東電は「廃炉に向けた中長期的なロードマップを考えるにあたり、損傷燃料がどのくらいあるのか、どのような技術開発が必要か検討するため、今後もこのような試みを継続的に行いたい。依然として2~3割の誤差はあると思うので、他の評価機関や専門家の意見を聞きながら精度を上げる必要がある」としている。
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1号機の全燃料、床に落下・侵食も…東電解析
(2011年11月30日20時49分 読売新聞)
東京電力は30日、事故を起こした福島第一原子力発電所1~3号機について、原子炉の温度や水位などのデータをもとに、炉心の状況の解析結果を発表した。
1号機では、最悪の場合、溶けた燃料すべて(100%)が圧力容器を突き抜け、格納容器の床まで落下し、堆積した恐れがあるとした。2号機では燃料の57%、3号機では63%が落下した可能性がある。
1号機が厳しい解析結果となったのは、3月の事故直後、原子炉への注水が約14時間中断し、2、3号機の6~7時間と比べて長かったため。燃料は一時3000度近い高温に達して溶融し、鋼鉄製の圧力容器の底に穴が開いただけではなく、格納容器のコンクリートの床(厚さ1・4~2・6メートル)も、最大65センチ侵食したとみられる。空だき状態となった核燃料から発生した熱は、燃料や制御棒など圧力容器内の全設備を溶かすのに必要な熱量の2倍に達した。
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福島第1原発事故 1号機燃料85%超落下 格納容器内、東電など解析
(毎日新聞 2011年12月1日 東京朝刊)
◇コンクリ65センチ侵食
東京電力福島第1原発1号機で、炉心溶融(メルトダウン)によって原子炉圧力容器が破損し、85%以上の核燃料が格納容器に落下したとの解析を、経済産業省所管のエネルギー総合工学研究所が30日発表した。東電の解析でも相当量の核燃料が格納容器に落ちてコンクリートを最大65センチ侵食したと推計。核燃料は格納容器の外に漏れていないが、事故の深刻さを改めて示す結果で、政府や東電は廃炉作業などに活用する。
同研究所は、詳細に原子炉内の状況を追跡できる方法を使用し、核燃料の損傷状態を試算した。その結果、1号機では地震による原子炉の緊急停止から5時間31分後に核燃料の被覆管が壊れ、7時間25分後に圧力容器の底が破損。核燃料の85~90%が格納容器に落下したと算出された。2、3号機でも約7割の核燃料が溶けて格納容器に落下した可能性があると推定した。
また、東電は別の方法で解析。1号機では、溶け落ちた核燃料の量は不明だが、「相当な量」とした。2、3号機も一部の核燃料が落下したと推定。いずれも落下した溶融燃料が格納容器の床のコンクリートを溶かす「コア・コンクリート反応」が起き、1号機では最大65センチ侵食。燃料から格納容器の鋼板までは最悪の場合、37センチしかなかったことになる。ただし、格納容器の下には厚さ7・6メートルのコンクリートがあり、地盤に達していないとしている。汚染水が大量発生している原因は、配管の隙間(すきま)などから格納容器の外に漏れているためと考えられる。
一方、2号機での侵食は最大12センチ、3号機で同20センチと推計した。
今回の解析が冷温停止状態の判断に与える影響について、経産省原子力安全・保安院は「原子炉の温度などの実測値を基にしているので関係ない」と説明。岡本孝司・東京大教授(原子力工学)は「燃料が格納容器の底に落ちていても、水につかって冷やされており原子炉は安定している。さらに情報を集めて解析精度を上げ今後の作業に役立てる必要がある」と提言する。【河内敏康、西川拓】
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1号機溶融燃料 65cm浸食
(11月30日 19時6分 NHK)
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、メルトダウンが起きた1号機の燃料は、鋼鉄の原子炉の底を突き破って相当の量が格納容器に落下し、容器の底のコンクリートを溶かして最大で65センチ浸食していると推定されることが、東京電力の解析結果から分かりました。2号機と3号機についても一部の燃料は格納容器に落下していると推定しており、改めて事故の深刻さが浮き彫りになっています。
福島第一原発の1号機から3号機については、核燃料が溶け落ちるメルトダウンが起き、一部の溶けた燃料が原子炉から格納容器に落下したとみられていますが、事故から8か月以上がたっても、詳しい状況は分かっていません。これについて東京電力や国内の複数の研究機関が、これまで得られた原子炉の温度や注水状況などから溶けた燃料の状態を異なる方法で解析し、30日、国が開いた研究会で結果を発表しました。このうち東京電力の解析では、最も厳しい評価をした場合、1号機については、すべての燃料が溶け落ち、原子炉の底を突き破って相当の量が格納容器に落下したと推定しています。格納容器の底にはコンクリートがあり、さらに鋼鉄の板で覆われています。燃料が格納容器の底に落ちると、高熱で反応してこのコンクリートを溶かして浸食するということで、最悪の場合、1号機で65センチの深さまで達すると推定しています。最もコンクリートの薄いところでは、格納容器の鋼板まで37センチしかないということで、改めて事故の深刻さが浮き彫りになっています。また、2号機と3号機についても、最悪の場合、それぞれ57%と63%の燃料が溶け落ちて、その一部が格納容器に落下したと推定しています。東京電力によりますと、原子炉と格納容器の温度は、21日現在で、いずれも100度以下になっていて、溶けた燃料は水で冷却されており、コンクリートの浸食は止まっていると評価しています。研究会では、このほかの研究機関の解析結果も発表され、複数の結果を基に原子炉や燃料の状態について議論されました。東京電力や国は、今回の解析結果をさらに詳しく分析し、今後の廃炉に向けて核燃料をどのように取り出すかなどについて検討することにしています。原子力安全基盤機構、技術参与の阿部清治さんは、東京電力の解析結果について「間違っているとは思わないが、まだ第一歩だと受け止めている。解析結果は一つだけでは答えを導き出すことができないからだ。今後はいろいろな解析結果を積み重ねて、事故の実態を分析していく必要がある」と話しています。