廃棄物に大量の核物質 未計量、IAEAに報告せず
(’11/12/15 中国新聞)
政府が国際原子力機関(IAEA)の保障措置(査察)の対象となっている全国の262施設を調査した結果、計量や報告をしていない濃縮ウランやプルトニウムなど核物質が廃棄物から大量に見つかったことが14日、分かった。政府は国際社会の批判を避けるためIAEAへの申告を急ぎ、水面下で協議を始めた。複数の政府高官が明らかにした。
中でも政府系研究所で高濃縮ウラン約2・8キロ、原子力燃料製造企業で約4トンの低濃縮ウランがそれぞれ未計量だったケースを重視して調べている。中部、北陸、中国の3電力会社や複数の原子力関連メーカーにも未計量とみられる核物質があり、確認を進めている。
日本が査察を受け入れる保障措置協定は1977年発効。核物質は兵器に転用されないことを保障するため計量管理し、IAEAに報告する義務がある。今回の未計量の核物質の多くは協定以前の廃棄物に含まれ、分散して処分されている。
兵器やテロに使われる懸念や安全上の危険には直ちに結び付かないが、政府が国際社会に対して十分な説明責任を果たさなければ、IAEA理事会などで問題視される恐れがある。政府高官は、日本がIAEAに来年提出する保障措置報告にクレームがつく可能性も否定できないと述べた。
政府高官によると、独立行政法人の日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター(茨城県)で昨年10月、保障措置協定前に処分された廃棄物から未計量の核物質が見つかった。これを契機に調べたところ、原子力機構の原子力科学研究所(同)でセメント固化された計約2・8キロの高濃縮ウランや計約636グラムのプルトニウムが見つかった。高濃縮ウランは試験用サンプルとして米国から輸入したとみられる。
査察を所管する文部科学省は、同様の事態が他の施設でも起きている恐れがあるとして今年8月、全国に調査を拡大。計14施設で協定以前の廃棄物などから未計量の核物質が見つかった。また協定後の廃棄物から核物質が検出された施設も複数あった。調査結果は非公式にIAEA側に伝え、対応を協議している。