「缶詰(サバの水煮)からも放射性物質を検出」という記事にもあるように、すでに缶詰から放射性物質が検出されている中で、外務省が「援助」と称して「途上国」に缶詰を送る計画(2012年3月から支給開始)を進めています。
これと似たことが、チェルノブイリ原発事故の後にも起こりました。
そのときも放射能汚染食品が「途上国への援助物資」として送られました。
缶詰を援助物資とする理由は、「“風評被害”を払拭するため」とのこと。
まず、多くの人に、こうしたことが進められようとしていることを知ってほしいと思います。
◆被災地の水産加工品缶詰がODAで途上国へ?!放射能、大丈夫?
(2011-12-06 脱原発の日のブログ)から抜粋
皆さん、外務省が今年の第3次補正予算案で、被災地で生産された工業製品や水産加工品をODA=政府開発援助の予算を使って購入し、開発途上国に無償で提供する取り組みを打ち出したのをご存知ですか? 理由は、「“風評被害”を払拭(ふっしょく)するため」。
外務省はそのための予算として、およそ50億円(うち水産加工品に10億円)を要求し、可決されました。現在、同省は対象国の調査を始め、その結果を受けてWFP=国連世界食糧計画に業務を委託し、加工工場から缶詰を買い上げて対象国へ送るそうです。
311以降の日本の放射能安全基準値は、皆さんご存知のとおり震災後はね上がり、ヨウ素2000ベクレル、セシウム500ベクレルと、他国に比べてものすごくゆるいものとなっています。この基準値で魚介類の缶詰が他国へ提供されると、それを食べた人々の健康になんらかの影響があるかもしれません。そうなると、日本は結果的に、助けるどころか他国の人を苦しめる加害者となってしまいます。
震災後は日本からの食料品輸入を制限している国が多いのだそうですが、貧困と飢餓に苦しむ国の中には、危険を承知で受け入れざるをえないところが出るかもしれません。そして、その缶詰を直接食べる方々に、放射能に汚染されている可能性があることが知らされないとしたら・・・
今も事故が収束していない以上、震災後の放射能被害は“風評”ではなく“実質的な”被害ととらえる必要があるのではないでしょうか。どうしてわざわざ汚染されてない国に、放射能汚染されているかもしれない食品を送らないといけないのでしょう。皆さんはどうお考えになりますか?
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<追加掲載記事>
◆被災地域からの魚をカンボジアの学校児童に:プノンペンポスト紙
(2012年7月13日 脱原発の日のブログ)から抜粋
WFP to feed schoolchildren Fukushima fish
The Phnom Penh Post
訳文:
世界食料計画(WFP)、福島の魚を子どもたちの給食に
日本政府と国連世界食料計画(WFP)は、昨年発生した東日本大震災と福島第一原発事故の影響を受けた地域の魚(缶詰)を、カンボジアの学校給食として配布する計画をしている。
この計画は、日本の反原発グループが抗議をしている。しかし、WFPは、福島第一原発事故による放射能汚染の可能性はなく、厳しい検査をしており、放射性物質はないというのがWFPの見解である。この食料援助は、日本の政府開発援助案件として、被災地の魚をカンボジア、ガーナ、コンゴ共和国、セネガル、スリランカに提供される。
今年の3月に124トンの魚(缶詰)がカンボジアに到着し、放射能汚染がされていないことを承認する前には、日本政府と日本政府ではない別の二人の検査官により検査が行われたと、WFPカンボジア代表のJean-Pierre de Margerie氏は答えた。「もしわずかでも放射能汚染されているという可能性があれば、WFPは支援物資とすることはしない。私は現場に行く時は、毎回必ず支援物資を受益者とともに食べるようにしています。そしてこの日本政府が提供する魚の場合も同じです」とJean-Pierre de Margerie氏は話した。
Jean-Pierre de Margerie氏によると、カンボジアの貧困地域では、親たちが子どもたちを学校に通わせるように、朝食を学校で支給しており、このプログラムは過去10年間行われている。日本政府が支給した魚(缶詰)は、今年3月にカンボジアに到着し、このプログラムを通し10月まで支給される。
Jean-Pierre de Margerie氏は、この魚は、福島第一原発から数百キロメーター離れた北海道と青森県で採れた魚であると話した。しかし、この魚(缶詰)は、日本の新聞報道によると、茨城県近海で採れた魚で、福島第一原発から50キロしか離れていないという。
今後30年以内にマグニチュード8の地震が発生する確立が87%の地域に住むSTOP!浜岡原発の戸倉由紀枝氏は、このODA案件を、日本政府の倫理観のない、ダブルスタンダードであり、恥ずかしく思い、中止を求めている。
プノンペンの日本の大使館は本紙の質問には回答せず、またカンボジアの教育省と厚生省はこのプログラムを知らなかったと答えた。
WFPは内部規則により、この魚(缶詰)の放射線量の検査結果は公表していない。Friends Internationalの国際コミュニケーションコーディネーターのJames Sutherland氏は、もしWFPにより支援物資である食料の安全が確認されたなら、それは相当なことであり、検査結果を公表することで、安全性を再保証することになると話す。また、「なぜ途上国だけで、他の国に提供されないのだろうか、とカンボジアの人たちは疑問に思うのではないか」と、Sutherland氏は言う。
東日本大震災以降、漁船の破壊と放射能汚染の不安により、被災地の漁業関係者は深刻な影響を受けている。
昨年の3月11日に、東北地方でマグニチュード9の巨大地震が発生し、15メーターの津波が福島第一原発を襲い、冷却装置が破壊された。水素爆発が発生し、原子炉建屋の屋根と壁が吹き飛ばされ、放射性物質が大気に放出された。それ以降、メルトダウンを回避するために大量の水が原子炉の燃料棒に放水され、放射能汚染された水が、海に流された。そして、大量のヨウ素131、セシウム134、セシウム137が放出された。
食品を通して、安全基準値以上の放射性物質を摂取した場合、癌になる危険が増し、そして放射性物質は甲状腺に蓄積し、成長を妨げる。政府は、食品の安全性について懐疑的にもかかわらず、引き続き、この問題に関する情報が公開されることは少ない。
日本の厚生労働省が最近した検査やアメリカの環境保護庁の調査と放射能の専門家の調査では、魚の放射能汚染は非常に低いか、ほとんどの国で放射能汚染は確認されていない。
気象研究所の最近の調査によると、地震後、福島第一原発1号機から以前の2倍のセシウムが放出され、その7割が海に放出されたことが、わかった。
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<追加記事>
◆放射能基準を緩めたタイでは日本からの水産物輸入が増加
(2012/02/19 風の便り)から抜粋
福島原発の事故以前は、放射能汚染食品の輸入基準が厳しかったタイが、原発事故の翌月に基準を緩和し(6ベクレル/kg → 500ベクレル/kg)日本からの輸入量を12%増やしている。
<福島原発事故から1週間後>
日本からの輸入食品に放射能検査を開始
―生産地など明記した書類が必要に(タイ)
(2011年3月18日 JETRO 日本貿易振興機構 バンコク・センター発)
保健省食品医薬品局(FDA)は3月16日、バンコク市内で食品輸入業者などを対象に説明会を開催し、日本から輸入される食品に対する放射能検査の実施を明らかにした。2段階に分かれる検査のうち、現在は1段階目にあり、検査結果を待つことなく通関できるサンプリング検査にとどまる。ただし、3月15日以降日本から輸入される食品は、輸入の際、輸入港のFDA事務所に生産地、生産日、食品の種類を明記した書類の提出が求められる。
<国内消費者の安全確保が目的>
「日本から輸入される食品の放射能汚染に関して」と題する3月16日の説明会で、FDAは今回の放射能検査の背景と内容を説明した。冒頭、FDAのピパット長官は、日本の原子力発電所の状況に関連して国内の消費者から、日本の食品の安全性と放射能汚染の有無について、多くの問い合わせがあったことを明らかにした。
同長官は「現時点で、日本の食品に放射能汚染は確認されていない」としながらも、放射能による汚染は、食品に付着する直接的なものと、大気や土壌中の放射能を農産物が取り込む間接的なものとがあるとして、今回の措置は、国内の消費者の安全確保のために必要な対応だと述べた。
<食品中のセシウム137の量で汚染を判断>
FDAは、1979年食品法(Food Act B.E.2522)に基づき、輸入食品のモニタリング検査を実施している。放射能検査についても、86年のチェルノブイリ原子力発電所の事故を受け、保健省告示第102号「放射能汚染を受けた食品に関して」が、88年にはその改正告示第116号がそれぞれ施行されている。今回の検査はこれらの告示を根拠として実施される。
告示第102号の第2項では、放射能汚染を受けた食品の規制について、セシウム137(Cs―137)の検出量が以下の基準値を超えないことと定めている。
(1)生乳:7ベクレル/リットル
(2)粉乳、乳製品、幼児用食品:21ベクレル/キロ
(3)穀物およびその他の食品:6ベクレル/キロ
FDAは、基準値を超えるセシウム137を含む食品を輸入した者に対しては、5万バーツ(約 15万円)以下の罰金を科すことになると説明している。
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ところが(何があったのでしょうか)4月に入って方針が大転換します。
放射能汚染食品の輸入基準が、6ベクレル/kg → 500ベクレル/kg
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<福島原発事故から1ヵ月後>
日本からの輸入食品に新基準等を導入(タイ)
(2011年4月12日 JETRO 日本貿易振興機構 バンコク事務所発)
保健省食品医薬品局(FDA)は4月11日、放射性物質に汚染された食品に関する新基準と、放射性物質による汚染の可能性がある食品の輸入条件に関する保健省令をそれぞれ官報告示した。これらの保健省令は翌4月12日より施行されている。福島、群馬、茨城、栃木、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉の12都県で生産された食品の輸入に際しては、食品の種類、生産地のほか、放射性物質の量が明記された書類の提出が求められる。
<食品中のヨウ素131、セシウム134および137の量で汚染を判断>
今回施行された保健省告示「放射性物質汚染食品の基準」(注1)では、放射能汚染を受けた食品の規制にあたり、これまで食品の汚染の判断に用いてきたセシウム137のみならずセシウム134とヨウ素131も加え、これら放射性物質の検出量が以下の基準値を超えないことと定めることになった。
(1)ヨウ素131:100ベクレル/kgもしくはリットル
(2)セシウム134とセシウム137の合計:500ベクレル/kgもしくはリットル
今回の新告示の施行を受け、86年のチェルノブイリ原子力発電所の事故以来、食品中の放射性物質検査の根拠となってきた保健省告示第102号「放射能汚染を受けた食品に関して」およびその改正告示第116号は廃止されることになった。