ふくしま集団疎開裁判が「世界市民法廷」の開催を決定

ふくしま集団疎開裁判が「世界市民法廷」の開催を決定した。

「世界市民法廷」開催決定

2012年1月1日
【速報】今すぐ、命の危険にさらされているふくしまの子どもたちを救うために 十二人の怒れる市民による「ふくしま集団疎開裁判」世界市民法廷の開催を決定

「私たちは100%」チェルノブイリ避難基準の強制避難地域で教育を受ける子どもたちです。
「0%の人たち」の手によって、私たちの命が危険にさらされるという不正義を、昨年暮れ、裁判所もお墨付きを与えました(12月16日決定)。私たちはこのような理不尽な不正義を許す訳には行きません。 
正義の裁きを下すため、2012年冬、「ふくしま集団疎開裁判」の世界市民法廷を開催することにしました。

以下、生原稿ですが(今後、詳細を公表)、発表します。

3.11以来、6.24の申立までのふくしまの現実と子どもたちの状況

頬を真っ赤にして、風の中を走りぬけ、木イチゴをほおばり、虫取りに胸を躍らせ、雪原をころげまわる・・・。それが、ふくしまの子どもたちでした。

3・11福島第一原発の巨大事故により、ふくしまはすっかり変わってしまいました。 疎開裁判の申立人である14名の子どもたちが住む郡山市では、安定ヨウ素剤の配布もなく、放射能測定値が公表されない中で、多くの市民が目には見えない放射能に曝されたのです。

息子を給水車の列に並ばせてしまった父親がいました。毎日屋外での部活に出かけた高校生がいました。卒業式を行うという学校の指示に従い、避難先から娘を連れて戻ってきた母親がいました。

SPEEDIのデータをはじめとする情報は隠され、「安全キャンペーン」により、事故は矮小化されました。文科省の年間20mSvの基準に象徴されるように、さまざまな基準値が突然引き上げられました。

不安と恐怖の中で、親たちは必死で子どもを守ろうとしてきましたが、行政による子どもたちの命と健康の確保は、除染という方法しかなされませんでした。避難区域に指定されていない郡山市の子どもたちには命と健康を確保するためには自主避難という方法しかありませんでした。しかし、自主避難は、子どもたちにとっては、友だちと別れ、知らない世界に飛び込まなければならないことでした。親たちにとっては、大きな経済的負担や家族が別れ別れになることが余儀なくされるため、その選択を誰もができた訳ではありません。

そのような中で、申立人となった14名の子どもたちはやむにやまれぬ思いで、「ふくしま集団疎開裁判」を起こしたのです。

申立の理由とその意味

(1)、なぜ、申立をしたのか?

文科省は、福島県の父母たちの抗議を受けて、2011年5月27日に、福島県内の学校について、空間線量の値が年間20mSv以下なら教育OKという基準を改め、年間1mSv以下を目指すと訂正しました。

しかし、現実に福島県内の学校は殆ど全てが年間1mSv以上の汚染状況であり、それどころか郡山市中心部では殆ど全てがチェルノブイリ避難基準で強制的に避難させられる移住義務地域(年5mSv以上)に該当する極めて危険な状態でした(汚染マップ参照)。これに対し、文科省と自治体は、福島県の父母たちが強く求めたにもかかわらず、子どもたちを安全な場所に移して教育を実施しようとしませんでした。そもそも政府は福島第一原発事故の加害者です。加害者という身でありながら、いわれなき人災のために命と健康の危険にさらされている子どもたちをこのまま放置しておくことは、過去に例を見ない凶悪な人権侵害行為であるのみならず、国際法上の犯罪である「人道に対する罪」に該当する重大犯罪です。

そこで、苦しみの中で救済を求めている市民の声に耳を傾けようとしない政府と自治体の人権侵害行為をただすため、「人権の最後の砦」として政府等の病理現象を正すことを本来の使命とする裁判所に救済を訴え出ました。それが2011年6月24日、郡山市の小中学生14名が郡山市を相手に訴えた「子供たちを安全な場所で教育せよ」を求める裁判(仮処分申立)です。

(2)、申立の意味とは

この疎開裁判が最終的に目指すのは、福島第一原発事故のために命と健康の危険にさらされている全ての子どもたちが安全な場所で教育を受けられるようにすることです。しかし、今の裁判制度ではそれを直ちに実現することは不可能です。そこで、まず、郡山市の14名の小中学生がいわば先駆けとなって、救済を求める裁判を起こしました。もしこの訴えが認められたら、次に、14名の小中学生と同様の危険な環境に置かれている全ての子どもたちの救済を、「子供たちを安全な場所で教育せよ」という裁判所の命令を踏まえて、市民による対行政交渉を通じて実現するというプランでした。その意味で、この14名は被ばくにより命と健康の危険にさらされている全ての子どもたちを事実上代表して、訴訟に出たのです。

審理の経過

疎開裁判は過去に例を見ない裁判のため、形式的な理由で門前払いされるおそれがありましたが、裁判所は門前払いせず、子どもたちの被ばくの危険性という裁判の主題の検討(実体審理)に入りました。

当初、2011年9月9日で審理を終え、結論を出す予定でしたが、当日、私たちが提出した書面により審理は異例の延長となりました。8月末に文科省が公表したセシウムの土壌汚染のデータにより、初めてチェルノブイリ事故との具体的な対比が可能となったからです(セシウムの汚染度が郡山市と同程度のルギヌイ地区を取り上げ、チェルノブイリ事故以後、その地区で発生した異常な健康障害が、郡山の子どもたちをこのままにしておくと、今後、同様の健康障害が発生することが予測されると指摘した矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の意見書など)。

これに対し、郡山市は、チェルノブイリ事故との対比について「不知」と答えるのみで、転校の自由があるのだから危険だと思う者は自主的に引っ越せばよい、安全な場で教育を受ける権利を侵害したのは東電であって自分たちではない、だから郡山市は子どもたちを安全な場所に避難させる義務を負わないと反論しました。これは人権宣言の正反対とも言うべき人権侵害の宣言です。

これに対し、私たちは、その後もチェルノブイリ事故との対比に関する証拠を精力的に提出し、万全を期しました。こうして、延長戦の審理は10月末に終了しました。

12.16判決(決定)の結論と理由

仮処分申立は本来、緊急に救済を実現するためのものですが、今回、裁判所が判断を下したのは審理終結から45日経過した、奇しくも、野田総理大臣が福島第一原発事故の原子炉は「冷温停止状態」になったと宣言したのと同じ12月16日でした。結果も同じく「避難停止状態」、子どもたちの申立を却下するものでした。

理由のエッセンスは、14名の申立は郡山市の全ての小中学生を有無を言わせず一律に疎開を求めるというものであるから、その要件は厳格に解する必要があること、そのためには14名の子どもたちの生命身体に対する具体的に切迫した危険性があること、その危険性を判断する上で最大の論拠となるのは空間線量の値が年間100mSv以上であること、ところが、14名の子どもたちが通う学校の空間線量の値が年間100mSv以上であることの証明はない、というものでした。

他方で、私たちが最も力を入れて主張・立証した「チェルノブイリ事故との対比」に対して、裁判所は一切応答せず、これを黙殺しました。

また、申立却下の最大の根拠となったいわゆる100mSv問題(100mSv未満の放射線量を受けた場合における晩発性障害の発生確率について実証的な裏付けがないかどうかという問題)について、審理の中では一度も当事者からも裁判所からも取り上げられたことがなかったにもかかわらず、裁判所は判決の中で、いきなり、なおかつ当事者が提出した証拠に基づかずに認定しました。つまり、裁判所は、処分権主義、弁論主義、証拠裁判主義といった「人権の最後の砦」を支える近代裁判の基本原則をことごとく踏みにじることで申立却下という結論を導き出したのです(その詳細は、裁判所の判決(決定)に対するコメント(1) コメント
(2) コメント(3))。

判決を是正し、今、命の危険にさらされているふくしまの子どもたちを救うために必要な取組み

裁判所の判決(決定)は「人権の最後の砦」である司法の自殺であり、政府と自治体の凶悪な人権侵害行為にお墨付きを与える重大犯罪です。そのため、ふくしまの子どもたちは今、命の危険という重大な危機にさらされています。これを救うために、私たちは再び、人類普遍の価値を有する近代の人権宣言の原点に帰って行動を起こすことにしました。その原点の1つがアメリカ独立革命のヴァージニア憲法3条です。

「政府は人民、国家または社会の利益、保護および安全のために樹立される。いかなる政府も、これらの目的に反するか、または不十分であると認められた場合には、社会の多数の者は、その政府を改良し、変改し、または廃止する権利を有する。この権利は、疑う余地のない、人に譲ることのできない、また棄てることもできないものである。」

私たちは、今から「市民の、市民による、市民のための市民法廷」を開催し、世界中の市民から構成される陪審員の手によって、上記の裁判所の判決が正しいかどうか、過っているならばその正しい判断と理由は何かについて、人類普遍の価値を有する人権宣言とそれを子どもに適用した「子どもの権利条約」に基づいて裁くことにしました。それが「ふくしま集団疎開裁判」世界市民法廷の開催です。

この世界市民法廷を通じて、今、命の危険にさらされているふくしまの子どもたちを救うために、世界中の良識ある市民から支持される正しい裁きを下したいと思います。

以 上

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