*先月、見落としていた記事だが、原発敷地内の事故処理作業員ではなく一般市民が、4カ月間の外部被曝だけで37ミリシーベルトも被曝している。チェルノブイリの例では、外部被爆よりも内部被曝が多く、外部被曝の3~4倍の内部被曝を受けている場合が多かった。それから推測すると、この方の内部被曝は100ミリシーベルトを超えている可能性が高い。また、外部被曝の数値以上に、どんな水を飲んで、どんな食べ物を食べていたか、ということがより重要になる。
外部被曝、最高37ミリシーベルト 福島住民調査で推計
(2011年12月9日3時13分 朝日新聞)
東京電力福島第一原発の事故による福島県民の外部被曝(ひばく)線量について、住民約1730人の推計値が最高37ミリシーベルト、平均1ミリシーベルト強だったことが県の解析でわかった。今回の対象は、飯舘村など比較的、空間線量が高い3町村の住民だが、約半数の住民が4カ月間で平常時の年間限度1ミリシーベルトを超える被曝をしていた。
住民の外部被曝の実態が判明するのは初めて。県は近く結果を公表し、本人に郵送で連絡する。
推計値は事故後4カ月間の外部被曝線量の合計で、自然放射線量を引いた値。内部被曝を考慮しても、がんなど健康影響が出るのが明らかな100ミリシーベルトに達した人はいないとみられる。ただし、低線量被曝の健康影響は十分解明されておらず、県は長期的に健康を追跡調査していく。国連によると、チェルノブイリ原発事故による避難民の外部被曝は平均20~30ミリシーベルトで、甲状腺がん以外の健康被害ははっきりしていない。
外部被曝推計線量は、全県民約200万人を対象に今後30年以上、健康への影響を見守る調査の基礎データとなる。県立医科大と放射線医学総合研究所が独自のソフトで推計した。
今回の対象は、県民の健康調査で「先行実施地域」に指定された飯舘村と川俣町(山木屋地区)、浪江町の住民約2万9千人の中の約1730人。原則として推計に必要な行動記録が明確で、県への提出時期が早かった順に解析した。
この結果、約半数の住民が1ミリシーベルト未満。残りの大半は1~5ミリシーベルトだった。5~10ミリシーベルトは約40人、10ミリシーベルト以上は約10人。最高は約37ミリシーベルトだった。
線量の高い人は、空間線量の高かった避難区域や、プルーム(放射性雲)の流れた地域での滞在時間が長かった可能性がある。
国際放射線防護委員会が勧告する平常時の市民の年間被曝限度は自然由来と医療被曝を除き、1ミリシーベルト。環境省も国の予算で除染する基準を年1ミリシーベルト以上に定めている。
推計では、各自で記入してもらった行動記録を基にした。事故の起きた3月11日から2週間分は、滞在場所を屋外、屋内、移動中にわけて分刻みで記入。屋内の場合、木造か鉄筋コンクリート造か建物の種類も明記した。3月26日~7月11日の分は居住地と、定期的な外出先、1日の平均的な屋外と屋内滞在時間を記述する。
この記録を基に、文部科学省のモニタリングデータとSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)から再現した各地の時系列の空間線量率を使って、外部被曝線量を計算した。子どもの方が放射線への感受性が高く、年齢や建物の種類も考慮した。(林義則、大岩ゆり)
・
年間最大68ミリシーベルトの外部被曝 浪江町の住民
(2011年9月8日8時5分 朝日新聞)
東京電力福島第一原発から約30キロ離れた福島県浪江町赤宇木(あこうぎ)地区の一部住民は、事故から2カ月間に約50ミリシーベルト被曝(ひばく)し、福島市などに避難後を含めた年間被曝量は最大68ミリシーベルトに上ると推計されることが、弘前大などの研究でわかった。同地区にとどまった場合、年間被曝量は約190ミリシーベルトに達すると試算された。7日の英科学誌ネイチャーのサイエンス・リポートに論文が発表された。
弘前大被ばく医療総合研究所の床次眞司(とこなみ・しんじ)教授らは4月中旬、原発から20キロ以上離れた北西方向1623カ所の大気中の放射線量を測定。住宅地で最も高かったのは、浪江町赤宇木小阿久登(こあくと)の毎時32マイクロシーベルトだった。
周辺住民が1日8時間を屋外で過ごしたと仮定し、セシウム134や137の半減期などを考慮すると、1年間の外部被曝量は計約190ミリシーベルトに上ると試算した。
原発30キロ圏外の赤宇木地区は4月中旬に計画的避難区域に指定され、住民は5月末までの避難を求められた。床次さんらは事故から2カ月後に避難したと仮定し、年間被曝量を推計。福島市内には毎時3.2マイクロシーベルトの地域もあり、同市への避難者は57~68、郡山市の避難者は57~59、二本松市の避難者は59~64ミリシーベルトと推計された。
文部科学省によるモニタリング調査によると、浪江町内でも赤宇木地区は、高い放射線量が計測されている。一般の人が人工的に浴びる放射線量の上限は年間1ミリシーベルト、業務に従事する男性は50ミリシーベルト。今回の原発事故では、年間20ミリシーベルトを超える地域に避難を求めた。床次さんは「避難することで、被曝量を3分の1に減らすことができた。放射線防護の点から、政府の避難指示は妥当だった」と話す。