横浜市で放射線授業始まる 親ら不安の声、教員にも戸惑い
(2012年2月10日14時35分 朝日新聞)
東京電力福島第一原発の事故を受け、横浜市立の小中学校で、放射線の基礎知識についての授業が始まった。内容は放射線の性質や活用法についての説明が中心で、保護者からは「放射線は怖くないと、子どもが思い込んでしまう」との不安の声も上がっている。
「私たちは今も昔も放射線がある中で暮らしています」。スイセンから放射線が出ていることを示す写真とともに、教材はこんな文言で放射線を説明する。X線などの活用法、放射線の単位や測定法、事故が起きた時の身の守り方などを解説している。
この教材は、文部科学省が昨年10月に公表した「放射線等に関する副読本」を横浜市教育委員会が要約し、A3判のプリントにしたもの。市教委は昨年12月に教員向けの研修会を開き、年度内に授業をするよう求めた。小学校低学年で30分程度、中学校では100分程度の授業が始まっている。
緑区の小学2年の児童の保護者(41)は授業後、「放射能は役に立つ」という感想が多かったと聞いて不安になった。「子どもはスイセンや、X線の例など目新しい知識に注意を引かれ、『大丈夫、安全』という印象を持ってしまう」と心配する。
「事故前と今で身の回りの放射線量がどう変わったのかなど、今起きていることを教えて欲しい」
手探りで教える教員側にも戸惑いが広がる。旭区の中学校教諭(51)は「原発事故で多くの人が苦しんでいるのに、『安心神話』を振りまく授業になりはしないか」。鶴見区の小学校教諭(56)は、「給食の汚染を心配して弁当を持参する子に対し、『心配しすぎ』という意見が出ないか」と懸念する。
市教委は「内容に偏りがあるという見方もあるが、公的に作られた副読本なので引用した。ニュースでも多く取り上げられるため、まずは基礎的な知識を学んでもらうのが狙い」と説明している。(星井麻紀)
■横浜市教委が作成した教材の抜粋
・放射線は、太陽や蛍光灯から出ている光のようなものです。
・目に見えていなくても、私たちは、今も昔も放射線がある中で暮らしています。
・放射線の利用が広まる中、たくさんの放射線を受けてやけどを負うなどの事故が起きています。
・自然にある放射線や病院のエックス線撮影などによって受ける放射線の量で健康的な暮らしができなくなるようなことを心配する必要はありません。
・一度に100ミリシーベルト以下の放射線を人体が受けた場合、放射線だけを原因としてがんなどの病気になったという明確な証拠はありません。しかし、(中略)放射線を受ける量はできるだけ少なくすることが大切です。
・事故が収まってくれば、それまでの対策を取り続けなくてもよくなります。
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★世界一の医療被ばく国である日本では、X線検査によって 年間1万人(全がんの4.4%)ガンになっている
ヒロシマ、ナガサキを経験しながら、世界でも突出して多い日本の医療被ばく。それを低減するために活動している高木学校・医療被ばく問題研究グループが、べリングトンの論文以後の重要な米国の動向を紹介しています。
【べリングトンの論文:X線検査による各国の発がん増加数0.5~1.8%と比べ、日本は3.2%と飛びぬけて高い。しかもこの数字に近年のCT検査の増加を加えると4.4%にもなるという医学専門誌LANCETに発表された論文】
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