海外の研究所が発表すると福島原発からのセシウム放出量(3万5800テラベクレル)は、チェルノブイリ原発事故の42%になり、日本の電力中央研究所などの発表では、チェルノブイリ原発事故の2~3割に「減少」する。おもしろい「現象」である。
ノルウェーの発表は「3万5800テラベクレルで42%」と明確だが、日本の発表は「3万~4万テラベクレルで2~3割」とあいまいである。しかし、以下の記事だけを見ると「チェルノブイリ原発事故で放出されたセシウムの2~3割」ということが印象付けられてしまう。
しかも、この数字は大気に放出されたセシウムだけの数字であり、福島第1原発の地下や海に放出された高濃度汚染水のセシウムは入っていない。
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セシウム4万テラベクレル大気へ 第1原発から、気象研試算
(2012/02/29 19:06 共同通信)
東京電力福島第1原発事故で大気に放出された放射性セシウムは、3万~4万テラベクレル(テラは1兆)に上るとの試算を、気象庁気象研究所や電力中央研究所などのチームが29日までにまとめた。
旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で放出されたセシウムは、計13万7千テラベクレルとの試算もあり、その2~3割に当たる。
チームは、昨年4~5月に北太平洋の79カ所で採取した海水のセシウムの量を分析。そのデータを基に、事故後に第1原発から放射性物質がどのように大気や海に拡散したかを示すモデルを使って逆算する形で、4月上旬までの放射性セシウム134と137を合わせた放出量を推定した。
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福島セシウム137放出3万5800テラベクレル、政府発表の2倍超か
(2011年10月27日 ブルームバーグ)
東京電力・福島第一原子力発電所の事故に伴って放出されたセシウム137の総量が政府発表の2倍以上になる可能性がある、とのノルウェーの研究機関による調査結果が「アトモスフェッリクス・ケミストリー・アンド・フィジックス・ジャーナル」誌に発表された。
同研究調査によると、事故のピーク時に福島第一原発から放出されたセシウム137は3万5800テラベクレル(テラは1兆)。経済産業省原子力・安全保安院が6月に発表していた放出量は1万5000テラベクレル。
セシウム137の半減期は30年であるため、健康被害が懸念されている。同調査によると、3万5800テラベクレルのセシウム137は、1986年に起きた史上最大のチェルノブイリ原発事故時の放出量の約42%に相当する。
同調査によると、キセノン133も1670テラベクレル放出されており、「原爆実験を除くと、キセノンの放出量は史上最大」という。原子力安全・保安院はキセノンの放出量を1100万ベクレルと見積もっている。
原子力安全・保安院防災課事務室の古作泰雄氏は電話取材に対し事故当初に放出されたとみられる放出量に大量の追加の必要性はないようだとの見方を示した。さらに、6月の試算が確定的なものかどうかははっきりしておらず、修正の必要があれば総放出量の試算を見直す必要が出てくるだろうと述べた。
細野豪志原発担当相は8月に、要望があるので放出量の数字を最新のものにすることを考えているとしながらも、「率直に言って、当初の数字から大幅に増加することはないだろう」と述べた。
ノルウェー大気研究所のアンドレアス・ストール氏らの同調査は大気化学関係のウェブサイト上で公開されている。
日本政府と東電は最新の福島第一原発からの放射性物質の総放出量を公表していない。同調査では、3月11日にマグニチュード9の地震が起き45分後に大津波が福島第一原発を襲ったが、その前に放射性物質の放出があった可能性も指摘している。
同調査は「原子炉の自動停止直後にすでに放出が始まっていた強い証拠がある」とし、「地震発生時に原子炉に構造的なダメージがあった可能性を示唆する」と指摘した。
原子力安全・保安院の広報担当、小板橋忠重氏は地震が原発に大きな損傷は与えないとの立場を崩していないと語った。
同調査では、4号機の使用済み核燃料プールに放水した際にセシウム137の量が「急減」していることから「放射性物質の放出が破損した原子炉だけではなく4号機の核燃料プールからも出ていることを示唆している」と述べた。
更新日時: 2011/10/27 16:44 JST
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放射性物質:85万テラベクレル…総放出量を上方修正
(2011年6月6日 毎日新聞)
経済産業省原子力安全・保安院は6日、東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の総量について、これまでの37万テラベクレル(ベクレルは放射線を出す能力の強さ、テラは1兆倍)から85万テラベクレルへと上方修正する解析結果をまとめた。内閣府原子力安全委員会の推計の63万テラベクレルに対し、過小評価との指摘が出ていた。安全委員会に報告したうえで、国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に提出する日本政府の報告書にも盛り込む。
総放出量は4月12日、国際原子力事象評価尺度(INES)でチェルノブイリ原発事故(総放出量520万テラベクレル)と同じ最悪のレベル7に引き上げた際に、保安院と安全委員会がそれぞれ発表した。
安全委は原発周辺で計測された放射線量などから、事故直後から4月5日までの間の大気中への放出量の逆算を試みた。一方、保安院は炉内の状態から試算。今回の見直しでは、2号機、3号機の爆発後の放出量を加えるなどした。
INESでは、数万テラベクレル相当の放射性物質の外部放出がある場合をレベル7と定めており、上方修正でもレベルは変わらない。【足立旬子】https://mainichi.jp/select/science/news/20110606k0000e040073000c.html
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保安院がとっくに発表していた、放射性ストロンチウム、プルトニウムの大量空中放出量試算
2011年6月29日 (原発・放射能)
竹下雅敏氏からの情報です。
保安院がとっくに発表していた、放射性ストロンチウム、プルトニウムの大量空中放出量試算
Monday, June 27, 2011
転載元より抜粋)EX-SKF-JP( https://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/blog-post_27.html )
去る6月6日、原子力安全保安院は「東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について」と言う題の文書を発表し、今まで福島第1原発から大気中に放出された放射性物質の量を4月に発表したときの2倍、77万から85万テラベクレルに引き上げましたが、その文書の中に、大気中に放出された物質の種類の一覧表が出ています。文書の13ページ目です。
これを見ると、放射性ストロンチウム、プルトニウムが大量に放出された、と保安院はモデル化しており、特に放射性ストロンチウムは2号機、3号機で、1号機とは1桁違う量が、プルトニウムはMOX燃料の3号機ではなく2号機で、他機とは2桁違う量が出た、とされています。
ストロンチウム89
1号機:8.2x10の13乗(82,000,000,000,000)ベクレルまたは82テラベクレル
2号機:6.8x10の14乗(680,000,000,000,000)ベクレルまたは680テラベクレル
3号機:1.2x10の15乗(1,200,000,000,000,000)ベクレルまたは1200テラベクレル
合計:2.0x10の15乗(2,000,000,000,000,000)ベクレルまたは2000テラベクレル
ストロンチウム90
1号機:6.1x10の12乗(6,100,000,000,000)ベクレルまたは6.1テラベクレル
2号機:4.8x10の13乗(48,000,000,000,000)ベクレルまたは48テラベクレル
3号機:8.5x10の13乗(85,000,000,000,000)ベクレルまたは85テラベクレル
合計:1.4x10の14乗(140,000,000,000,000)ベクレルまたは140テラベクレル
プルトニウム241
1号機:3.5x10の10乗(35,000,000,000)ベクレルまたは350億ベクレル
2号機:1.2x10の12乗(1,200,000,000,000)ベクレルまたは1.2テラベクレル
3号機:1.6x10の10乗(16,000,000,000)ベクレルまたは160億ベクレル
合計:1.2x10の12乗(1,200,000,000,000)ベクレルまたは1.2テラベクレル
(合計は、2号機のプルトニウム241の放出が突出しているので、残りは切り捨てられていますね。)
プルトニウムは他にも238、239、240が出ており、いずれも2号機が突出して2桁違います。
週刊誌アエラには載ったそうですが、何の注目も引かなかったのは何故なのでしょう?
それと、忘れてならないのは、これは空中に飛散した分だけ。福島第1原発内に溜まっている高濃度汚染水11万トンの中には、72万テラベクレルの放射性物質(ヨウ素とセシウム)が入っています。大気に出たのとほぼ同量の放射性物質が水の中にあるのです。2号機の海側ピットの「亀裂」(というより、普通の放出パイプに見えましたが)からでた汚染水の放射性物質は確か4000テラベクレルちょっと。単純に全部合計すると、150万から160万テラベクレルとなり、チェルノブイリの10分の1から一挙に4分の1以下になります。
放出放射能57万テラベクレル 原子力研究機構が試算
(2011年8月22日20時57分 朝日新聞)
★原発の爆発から1ヵ月後の記事
最大で1時間1万テラベクレル 国際尺度、最悪の7も
(2011/04/12 01:07 共同通信)
福島第1原発の事故で、原子力安全委員会は11日、原発からは最大で1時間当たり1万テラベクレル(テラベクレルは1兆ベクレル)の放射性物質が放出されていたとの試算を明らかにした。
政府はこれを受け、原発事故の深刻度を示す「国際評価尺度(INES)」で最も深刻な、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故に並ぶ「レベル7」とする方向で検討に入った。
INESの評価によると、放射性のヨウ素131換算で外部への放射性物質の放出量が数万テラベクレル以上である場合は、レベル7であるとしている。