いのちの映画祭(第4回上映会 3月18日@福岡)
「チェルノブイリ・ハート」「ミツバチの羽音と地球の回転」を上映
「チェルノブイリ・ハート」に関連する重要な情報
福島の子どもたちの放射線被曝と心臓発作 クリス・バズビーから抜粋
放射線被曝はガンと白血病を引き起こすと一般に考えられています。被曝した人が何年も経ってからガンを発症するのです。高線量では深刻な決定論的影響があり、結果として死に至ることが認められています。私は放射線核種のセシウム137 の内部被曝による非ガン性影響について話したいと思います。
これは、原子炉から出る寿命の長い主な汚染物質のひとつで、チェルノブイリのフォールアウト(放射性降下物)と福島からの汚染に存在していました。この物質に子どもたちが慢性的に被曝するときの影響と、それがどのように心臓の発達障害をもたらすのかについて考察したいと思います。
ユーリ・バンダシェフスキー教授がチェルノブイリ事故汚染によるベラルーシ地域の子どもたちの汚染被曝の影響について広範囲な研究を行っています。
彼は、セシウム137平均体内負荷量が40Bq/kg以上の子どもたちが、不整脈、心不全(狭心症)、心臓発作などの致命的な心臓疾患に罹ったことを実証しました。
彼の貴重な研究に対してエドワード・ラッドフォード記念賞を授与された2009年欧州放射線リスク委員会レスボス会議に寄与されたバンダシェフスキー論文によれば、約20Bq/kgを越えるレベルの汚染被曝をした子どもたちに、ECG(心電図)検査による不整脈が現れているのが分かります。
私はこの問題がどのように起こるのか、そのメカニズムについて簡単に説明したいと思います。
子どもの心臓モデル
ICRP(国際放射線防護委員会)の参考人体データによれば、5歳児の心臓質量は220gで、その組織細胞だけでは85gです。心臓は重要な器官で、そのはたらきは驚くべきものです。人間の一生を通して休みなく血液を送り出さなければいけません。心筋細胞はからだで最もエネルギーを費やす細胞で、疲れることなく、人間の平均寿命の間に30億回以上も休みなく収縮運動を繰り返します。
人間の心臓ポンプの30億回にも昇る鼓動活動によって、7000リットルの血液が、無意識に、10万マイルの血管を通して毎日送り出されているのです。
心臓の筋肉細胞数は3 x 109個あるとされています。そのシリンダー状の寸法は約100-150μの長さで 20-35μの直径です。それらは1年に約1%の速さでしか再生されないので、心臓発作を経験した人なら皆ご存知のように、その細胞が傷つくことは非常に深刻なことです。
人間の心臓中に3 x 109 個の細胞があるとすると、細胞質量が85gの子どもの心臓の細胞密度はKg当たり3.5 x 1010になります。
セシウム137核種が筋肉に濃縮されることは長年にわたって知られています。
50Bq/kgのセシウム137がこの心臓の筋肉細胞に入るとしましょう。これはセシウム137のベータ粒子から50の飛跡に当たり、たぶんその娘核種のバリウム137mのガンマ線崩壊から1秒間に20の飛跡もあるでしょう。これは合計70の飛跡/秒になります。それぞれの飛跡は約400個の細胞を攻撃します。セシウム137の汚染地域に住む慢性的にこのレベルの汚染を受ける子どもたちの場合、1年間の飛跡数は単純にKg当たり70x 60x60x24x365 = 2.2 x 109になります。
これは1個の放射線電子飛跡にヒットされる細胞数がKg当たり8.8 x 1011ということです。
このモデルでは、私たちはすべての心臓細胞が一つの放射線飛跡によって約25回ヒットされることがすぐわかります。もしこれらの飛跡のたった1%で細胞が死ぬとしたら、子どもの心臓はその機能の25%を失うことになります。その細胞がすべて死んでしまうからです。
細胞の壊死は、老人の場合と同様に、伝導性の問題をもたらし、心臓不整脈と心臓発作が結果として起きて来ます。留意しなければいけないのは、心臓の筋肉は非常にゆっくりと以外は再生できないことです。実際、心臓細胞は再生しないものと元々考えられていました。60年代の大気核実験による炭素14が心臓中にあることが発見されたことで、1年で1%の細胞の再生があることが分かったのです。ですから、心臓はからだの非常に重要な器官であることが分かります。その細胞が破壊されると修復できないのです。
チェルノブイリの子どもたちが心臓病に掛かり死んで行くのはそのためです。
ベラルーシの成人人口が心臓病に掛かり死んで行く理由です。
福島
最近、福島の放射線汚染によって子どもたちに心臓発作が起きていると私たちは聞きました。従ってこれは予想されたことで、心筋中のセシウム137やほかの放射線核種による内部汚染の結果です。この発症の重大性を考え、ECRR委員会は2009年レスボス会議でのバンダシェフスキー論文を発表することにしました[www.euradcom.org]。
福島の汚染地域居住者について
これらの考察によって、汚染地区でセシウム137を飲食・呼吸している子どもたちに、臨床調査とECG(心電図)検査を行うことが急務です。心臓異常があるとされる子どもたちは全員直ちに汚染のない地域に避難させるべきです。もし心臓疾患がある子どもたちが見つかれば、すべての子どもたちを避難させることが緊急課題であるべきです。
2011年9月9日 クリス・バズビー 訳文責:森田 玄
※ぜひ、翻訳の全文をお読み下さい。
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3月17日、18日の「いのちの映画祭」開催を前にうれしい報告が届きました。
(皆さん、ぜひ「いのちの映画祭」にご参加下さい)
先行して開催されたチェルノブイリハート上映会&中村隆市トークCaféの報告(3月15日 いとしま菜の花プロジェクト)
3月10日(土)、チェルノブイリハート上映会&中村隆市さんトークCaféが開かれました。
なかなかハードな内容の映画に、どれだけの人が集まってくれるのだろう…と、内心、心配していたのですが、何と100名を超す人が集まってくれました!
ありがとうございます。この映画は、何度見ても、胸が詰まります。
大人の身勝手な選択が、何の罪もない子どもたちに犠牲を強いていること、その影響は今もなお続いているという現実。それがこれからの日本の姿と重なり、心が折れそうになります。もちろん、この映画で起こっていることが、すべてこれからの日本に起こるぞ!と不安をかきたてたいわけではありません。ただ、それが起こってもおかしくないほどの深刻な事故を、この日本で起こしてしまったという現実に、私たち大人はもっと正しい危機感を持って向き合わなくてはならないと思っているのです。
そういう意味でも、この映画が今の私たちに伝えるメッセージは大きいと思っています。
また、後半は、中村隆市さんをお迎えして、深い話をお聞きしました。
最初に紹介してくださったのは、セヴァン・スズキによる「伝説のスピーチ」
彼女は、12歳の時に、リオで開かれた環境と開発に関する国連会議(地球サミット)で、集まった世界の指導者たちにこう語るのです。(前略)
「こんな大変なことが、ものすごいいきおいで起こっているのに、私たち人間ときたら、まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。まだ子どもの私には、この危機を救うのになにをしたらいいのかはっきりわかりません。でも、あなたたち大人にも知ってほしいんです。あなたたちもよい解決法なんてもっていないっていうことを。」
「どうやって直すかわからないものを、これ以上こわしつづけるのはやめてください。」
(略)
「父はいつも私に不言実行、つまり、なにをいうかではなく、なにをするかでその人の値うちが決まる、といいます。しかしあなたたち大人がやっていることのせいで、私たちは泣いています。あなたたちはいつも私たちを愛しているといいます。しかし、いわせてください。もしそのことばがほんとうなら、どうか、ほんとうだということを行動でしめしてください。」
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このスピーチは、今から20年前に語られたものです。
けれど、ここで語られていることは、そのまま20年たった今にも通じるメッセージだと思います。また、映画に出てきたベラルーシの子どもたち、そして、福島の子どもたちの思いを代弁するかのような響きさえ感じます。そう。
環境、開発、エネルギー、戦争、貧困、食糧etc・・・目に見える事象は違っても、その問題の根本にある構造は、すべて同じ。それは、一部の大人が権力と経済を独り占めにしたいが為に引き起こしていることが、何の罪もない市民や子どもたちなどに多くの犠牲を強いているということ。そして、引き起こしてしまったことに対する責任を一切に取ろうとしない大人の身勝手さと無責任さ、それを容認している社会の歪み。
伝説のスピーチに続く中村さんのお話は、今起こっている原発の問題を、もっと大きな視点でとらえ、その問題の構造に気づくことと、それに対して「おかしい!」と声を上げることの大切さをわかりやすく伝えてくれました。
中村さんの話によると、「1週間の中で、会話の中に社会的な話題が出てきたかどうか?」を世界的に調査したところ、「はい」と答えた人の割合が25%以下の国(つまり4人に1人以下しか話題にできていない)は、問題あり…という統計があるそうなのですが、なんと、日本はわずか6%だったそう。
つまり、原発についても、原発そのものはもちろん大きな問題ですが、私たちの命と暮らし、そして、子どもたちの未来にかかわるような重要なことを、日常の会話にしてこなかったそれまでの「世間」にも問題があると思うのです。
中村さんは、「これからは、社会的な話題をもっと気軽に会話にできる文化をつくること。一人ひとりが賢く選択していくための力をつけること。そうして、市民力を高めることが大切」とおっしゃっていました。
その他にも、原発は事故が起きなくても危険なこと、ウラン鉱山での被ばくのこと、内部被ばく・低線量被ばくの危険性について、玄海原発とその周辺の健康被害について、CTスキャンなど医療被曝のこと、放射線副読本のこと、食糧汚染のこと、がれきのこと等など・・・話は続き、予定時間があっという間に過ぎてしまいました。
最後に、冒頭のセヴァン・スズキさんが2児の親になった現在の映像をみせながら、「一人ひとりが自分の暮らしを大切に守り、充実して生きていくこと。」の大切さをメッセージとして残してくれました。
中村さん、集ってくださった皆さん、どうもありがとうございました。
明日は3.11…という日に、こうした場を皆さんと持てたことで、今の現実を直視しつつ、また、前に進む勇気をもらえたように思います。
最後に、アンケートに残された感想をいくつか紹介しますね。
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・映画はじめから、とても胸がつまりました。生きることに真剣にまじめに取り組みたい。本当にそう思いました。知るということは大きなことです。自分が、これから、今からどう生きていくのかで未来は変わると思い、行動していきます。
・映画と中村さんのトークを通して、子どもの未来のために私たち大人がすべきことは何かを真剣に考えていきたいと思いました。本当に今日は来てよかったです。
・チェルノブイリの現実と、今、日本が置かれている立場をもっともっと多くの方に知っていただきたいです。
・自分の暮らし方(衣食)の在り様をさらに見つめなおしたいと切に思った。
・生活に根差した運動をされている言葉に胸をうたれました。セヴァン・スズキさんのメッセージが感動しました!
・より強く意思を表現していこうと思った。
・大人の責任を果たすことの具体的な行動が明確になった。まずは、年齢の低い子から順に安全な食べ物を!
・子どもや未来に対する大人の責任を感じました。
・おかしいことをおかしいと声を出さない市民。自分はそのひとりであり、意識を変えなければならないということを改めて気づかされました。
・初孫が生まれました。当たり前の暮らしを続けていけるように声を出して、政治の話をしよう!
・未来に責任を持って、原発をどうするか決めるのは我々です。
★「いのちの映画祭」でお会いしましょう。