「もう一度、原発破裂したら日本人は生きていけない」 大江さん

もう一度、原発破裂したら日本人は生きていけない 大江さん
(2012年3月19日 東京新聞夕刊)

 【パリ=野村悦芳】ノーベル文学賞作家の大江健三郎氏(77)が十八日、パリで開かれている欧州最大規模の書籍展「サロン・ド・リーブル」で講演し、東京電力福島第一原発事故後に停止された日本の原発について「二度と稼働させてはならない」と訴えた=写真、野村撮影。

 大江氏は「もう一度原発が破裂したら、日本人は生きていけない」と指摘、事故後、二基を除いて原発が停止している日本の現状を紹介し、「破滅から私たち自身を守るためには、活動していない原発を動かさないことだ。(日本人は)危機を認め、根本的なモラルを持たなければならない」と強調した。

 また、広島、長崎の原爆にも触れ、「五十年前、私は原爆は既に終わった歴史だと思っていたが、被ばくの問題は終わっていなかった。今、福島で起こっていることは四十年後に顕在化する」と危機の深刻さを語った。

 講演には三百人以上が集まった。大江氏は影響を受けたサルトルをはじめユゴー、ランボー、カミュらフランスの文学者への愛着と称賛を語り、最も好きなフランス語として「ペ(平和)」を挙げて、講演を締めくくった。日本は今年の書籍展の特別招待国で、大江氏ら約二十人が日本から招かれている。

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