「今度、東ティモールに行って来るよ」
出発前に周囲話しをしていると、「カンタ!ティモール(東ティモールが舞台のドキュメンタリー映画)見たよ」というのが私のまわりの人の多くの反応でした。映画を見ていなかった私にとっては、コーヒー・独立後10年・山に木がないらしいというような断片的な情報しか持っておらず、どんな国だろうかとわくわくしながらの出発でした。
福岡から飛行機で出発し、東京とバリで乗り継ぎ、首都ディリからは車に乗り換え4時間以上。長旅の末たどり着いたハトゥカデ集落は、絵本の世界のようでした。青い空に、牧草地のような山肌、茅葺屋根の丸い家。近くにも、遠くの山々にも電線がない空間というのは、初めての景色です。集落には、電気や水道が通っておらず、燃料はガスではなく薪を利用。車やバイクなどの動力付き移動手段もないとのことでした。
あらゆることが、ひとの力で行われている暮らしは、日本の便利な暮らしに慣れている私にとって目からうろこがたくさんありました。
ハトゥカデ集落に泊まった翌朝。コーヒーの用意がちょうど始まるところでした。まず登場したのはパーチメントコーヒーです。2kg程の量を臼に入れ、棒で突いて脱穀し、グリーンビーンズにするところから始まりました。中華鍋を使って、薪の火を使った焙煎工程。日本だと電動ミルでガーっと粉にしてしまうところも、臼を使って粉にしていきます。抽出の際も、また薪です。所要時間は1時間以上でした。
朝食用の蒸したキャッサバと共に、出来たてのコーヒーを頂きました。深く煎られていて、濃い見た目と違い、とっても飲みやすい。収穫したての新鮮なコーヒーの美味しさなのでしょうか。過程をみたこと嬉しい気持ちも含んで、大変美味しい1杯でした。
その他、家を建築途中だった、カルコスさんにお話しを聞いたところ、約3ヵ月かけて家も自分で建てるとのこと。木や竹、草を使った完全自然素材の家で、木同士を組み合わせるのも、蔓や竹が使われていました。また、水道もひかれていませんので、川に水を汲みにいったり、ジョアオさん宅では水源から竹の樋を通して敷地内に水を引いていました。
普段日本で暮らし、できるだけ自然素材の家がいいいな。食べ物は自分で家庭菜園やりたい。食事も手作りのものがいい。と、「できるだけ」と考えていることの究極の形がハトゥカデのみなさんの暮らしでした。
普段私たちが「ライフライン」=命綱と呼ぶ、電気水道ガスはここにはありません。ここでは、自然や家族がライフラインのようでした。電気や水道は自然があってこその機能するもので、その大元には豊かな自然と人の存在がかかせないことを身を持って教えてもらった気がします。自然からは離れ、人の繋がりがなくてもそこそこ生きていける暮らしと、その対極にあるハトゥカデの暮らし。ここでの暮らしは厳しそうでしたが、日本の便利な暮らしとここの暮らしの中間地点はどのくらいなんだろうか。自然にも人にも無理なく心地よい地点での暮らしとはどういうものだろうか。そのバランスについて、考える旅になりました。(増永晃子)