●パトリシア・モグエル
(生物学者、環境活動家、ラテンアメリカン大学教授)
パトリシア・モグエル
貧しい人の依頼は無償で引き受けるという社会派の弁護士であった父の 影響から、幼い頃より社会問題や環境問題に触れながら育つ。
高校卒業後、中東やヨーロッパを旅し、地元の人々や自然に触れ、各国の 社会状況を目の当たりにする。帰国後は大学へ進学し、生物学を専攻。 その後、アグロフォレストリーに基づく有機コーヒー栽培や先住民族の 研究に取り組む。
メキシコにおけるアグロフォレストリー研究の第一人者であり、国内は もとより、国外でも積極的に講演を行いながら、アグロフォレストリーの 環境や地域文化に対する重要性を広く訴えている。
「研究は、あたまでなく、心でする」と言う彼女は、常にフィールドを歩き、 理論に限らない、現場に直結したアドバイスや情報を生産者に提供している。 現在は、先住民ナワット族の有機コーヒー生産者組合「トセパン」とともに、 モデルプロジェクトとなるべく、持続可能な取り組みを行っている。 私生活では、二児の母でもある。
●アルバロ・アギラル=アヨン
(トセパン・ティタタニスケ地域農業共同組合 組合員)
アルバロ・アギラル=アヨン
大学院で農学や農村開発を学んだ後、メキシコ各地で農村開発に携わる。 社会的に厳しい状況に置かれている先住民族たちを救いたいという強い思い から、1980年からトセパン組合の設立に中心的に関わり、現在まで技術 アドバイザーとして組合で持続可能な取り組みを行ってきた。
ナワット族ではないが、組合運営の中心的な役割を果たしており、組合の 代表者と同じく、メンバーたちから非常に厚い信頼と尊敬を得ている。
●有機コーヒー生産者グループ「トセパン・ティタタニスケ」
トセパンのロゴマーク 「団結」と「わかちあい」を表したトセパンのロゴ
トセパンメンバーとアルバロ(赤いTシャツ)
1977年、メキシコ・プエブラ州で結成された先住民ナワット族による生産 者組合。
組合名であるトセパン・ティタタニスケは、ナワット語で「団結と協力が 幸せへの道である」ということを意味する。5,800世帯にも及ぶ組合員は、 組合本部があるケツァーランの町を中心とした7地域66のコミュニティに 暮らしている。
この一帯には、熱帯雲霧林と呼ばれる生物多様性の豊かな森が広がり、 伝統的に「アグロフォレストリー」によって有機コーヒーや果樹が育て られてきた。
組合が結成されて以来、トセパンはコーヒー栽培をベースに、香辛料、 キノコ、ナッツ、果樹等の作物栽培や畜産なども行っている。特徴的なのは、 これらの活動が、地域内で資源をすべて循環させて行われているということ である。また、トセパンでは、組合設立当初から女性たちが組合の活動に 活発に参加してきた。組合内での作物栽培や畜産に従事するだけでなく、 女性が主体となって、パン屋、トルティーヤ(とうもろこしの粉を使った メキシコの主食)製造、日用品店が運営されており、女性の自立を目指した 多様な活動が積極的に行われている。
また、組合独自の共同金融機関「トセパントミン」を設立。地域内に43の 支店を設け、組合員に貯金や低利子ローンなどの金融サービスを行っている。
トセパンの組合員主体の多様で持続可能なコミュニティづくりはメキシコ 国内でも高く評価されており、1995年に「フォーレスト賞1995」を、2001年 には「環境賞2001」をメキシコ政府から受賞している。
コーヒーの樹とトセパンの生産者
ナワット族に受け継がれてきた「連帯」、「協力」、「分かち合い」と いう考えのもと、近年は、これまでの活動に加え、環境教育やエコツアー など新しいプロジェクトにも取り組んでいる。