第16話.本当の豊かさを求めて

こうした自然の被害を受けながらも、カルロスは有機栽培に取り組み続けた。「化学肥料を使わなくなって4年経った耕地の土壌には、たくさんの有機質が含まれている」とカルロスは土作りの手ごたえを感じている。

ジャカランダ農場での有機栽培を見学する人々
ジャカランダ農場での有機栽培を見学する人々

当初は、周辺の関係者も心配した有機栽培だったが、今日、ジャカランダ農場の有機栽培はいくつかの新聞にも紹介され、その実践を学ぼうと多くの見学者が訪れるようになった。

ブラジルの有機農業協会の会長ワンダレイ氏は、カルロスの人柄と仕事について「とても真面目で研究心の旺盛な方です」と語る。1996年、同協会の「有機コーヒー」としての認定条件を満たす栽培をしていたのは、ジャカランダ農場だけだったという。

「有機コーヒーの研究はこれからですが、この頃やっと生産に自信を持てるようになりました」と語るカルロス。「次に世代に豊かな自然と希望を残すことこそが本当の豊かさ」と考え、人と自然を大切にするその一貫した姿勢は変わることはない。

もう一つの物語
カルロスがコーヒーの有機栽培に辿り着くまでの歩みは、ひとまずここで終わる。そして、ジャカランダ農場で生産される有機コーヒーが、その名の通り、「有機無農薬ジャカランダコーヒー」として日本の食卓に上がるまでの物語が、ここから始まる。

この物語がなければ、「ジャカランダ農場のコーヒーは、他の農場のコーヒーと混ぜられ、ブラジルサントスの名でドイツかイタリアかスイスに輸出されていた」という従来通りの状態が続いていた。

もう一つ物語、それはジャカランダ農場のカルロスに、ある一人の男が辿り着くまでの軌跡である。

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「ジャカランダコーヒー物語」

ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。

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