第24話.有機栽培の意味を実感するとき

地球上で最も遠い距離を埋めるために、中村は、ブラジル、サンパウロに有機コーヒー社の南米事務所を設立する。現地スタッフは毎月ジャカランダ農場を訪問し、農作業、コーヒー樹の様子を写真やビデオに収録。さらにカルロスや農場のスタッフと話したことをまとめて日本に報告した。

ブラジルと日本の掛け橋となって活躍するクラウジオ・ウシワタ(右)
ブラジルと日本の掛け橋となって活躍するクラウジオ・ウシワタ(右)

このブラジルと日本をつなぐ掛け橋の役割を果たしているのが、日系二世のクラウジオ・ウシワタである。ポルトガル語と日本語を使いこなすクラウジオは、この産直活動において必要不可欠な存在になる。彼が毎月ブラジルから送ってくるジャカランダ農場の写真やレポートにより作成されたパンフレットやビデオは、消費者に届けられた。

そして、消費者からはこんなメッセージがジャカランダ農場に届いた。

「いつも美味しく飲ませて頂いているコーヒーが、どんな方の手で、どのように作られているかがよく分かりました。農場で働くスタッフの皆さんの生き生きと楽しそうな表情が印象的でした。カルロスさんの人間性がこのおいしいコーヒーに生かされているようで、とても感動しました」

「堆肥作りからとても根気のいる仕事をされて、若い人から年配の人までとても楽しく農場の仕事をされていることが分かりました。ジャカランダコーヒーを飲むときには、皆様のお顔を思い出しながら飲ませて頂きます」

これらのメッセージをクラウジオが翻訳して伝えているとき、カルロスや農場のスタッフは、実に幸せそうな表情を浮かべる。それまで、ジャカランダ農場で栽培された無農薬コーヒーは、どこに輸出され、誰に飲まれているかも分からなかった。だから、「自分たちの仕事が喜ばれている」ことを実感する機会もなかった。それだけにスタッフは「最高だ。本当に嬉しい」と答えるのである。

日本とブラジルという地球上で最も長い距離を隔てた北と南の産直活動はこうして実現した。

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「ジャカランダコーヒー物語」

ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。

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