ジャカランダ農場の最も標高の高い牧草地から大地を臨むと、10万本のコーヒー樹が植えられた丘陵のうねりの中に、波間を漂う小舟のように点在する10数軒の家屋を見つけることができる。
現在、ジャカランダ農場には、コーヒー栽培に携わる16人の農場スタッフと、その家族40人が定住し、コーヒーから得られる収入と、それぞれの家庭で営まれる菜園と家畜により生活を築いている。
ジャカランダコーヒーは、農場主カルロスの構想のもとに注がれた彼らの労働なくしては語れない。足場の不安定な斜面に機械は持ち込めず、草刈り、堆肥の散布、コーヒーの実の収穫などは、すべて手作業で行われる。そのため、コーヒー栽培の仕事はおのずと厳しい肉体労働が中心となる。
それでもジャカランダ農場の土に根ざした生活空間は、日々の厳しい労働を優しく包み込む不思議な安らぎがある。世代を越えて受け継がれてゆくコーヒー栽培の歴史。そして、コーヒー樹とともに土に根ざしたその生活空間は、今もなお変わることはない。
目次
「ジャカランダコーヒー物語」
ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。
- 第1話.カルロスの祖先から
- 第2話.カルロス・フェルナンデス・フランコの誕生
- 第3話.幼年時代、豊かな自然のなかで
- 第4話.父イザウチーノのコーヒー栽培
- 第5話.カルロスの原風景
- 第6話.初恋
- 第7話.青年時代、ブラジルの大河に橋をかける
- 第8話.ジャカランダ農場主として
- 第9話.農薬の到来
- 第10話.次女テルマからのレポート
- 第11話.カルロスと農場スタッフ
- 第12話.福祉活動との関わり
- 第13話.コーヒーの有機栽培へ
- 第14話.リスクを背負って
- 第15話.ジャカランダ農場が受けた被害
- 第16話.本当の豊かさを求めて
- 第17話.「幸運」な出来事
- 第18話.水俣病との出会い
- 第19話.無農薬野菜の産直運動
- 第20話.チェルノブイリ原発事故
- 第21話.病に倒れて
- 第22話.ブラジル、遠く広く
- 第23話.想いを全て伝えて
- 第24話.有機栽培の意味を実感するとき
- 第25話.苦境を越えて
- 第26話.視線は地平線の遥か遠くまで伸び
- 第27話.コーヒー樹に囲まれた生活空間
- 第28話.コーヒー樹を見守り続けて 〜現場監督 ニーノの仕事〜
- 第29話.労働のなかの静かな祈り
- 第30話.コーヒー園に響く幼子の声と歌
- 第31話.ジャカランダコーヒーの生豆、60キロの重さ
- 第32話.老いてもなお
- 第33話.夏の草刈り
- 第34話.日が暮れて
- 第35話.ある雨の日の事故
- 第36話.土曜の夜、協会で
- 第37話.ジャカランダ農場、故郷として
- 第38話.写真でたどるジャカランダコーヒーの旅路 -土から生まれて食卓に届くまで-