第29話.労働のなかの静かな祈り

ニーノの指示に従い、スタッフたちはそれぞれの作業所に散っていく。

ニューバとホベルト
ニューバとホベルト

収穫も終わりに近づく8月の下旬には、収穫作業の際に地面に落ちたコーヒーの実を採取する作業が行われる。地表を覆う落ち葉をかき集め、コーヒーの実と石と枝葉を振り分ける。

一緒に作業をするホベルト(23)とニューバ(20)は、結婚して今年で3年になる。ホベルトが掻き集めた落ち葉を、ニューバが直径1メートルほどのザルに乗せる。コーヒーの実が混在した枝葉を放り上げると、まず実と小石がザルに落ちてくる。同時にザルを手前に引くと、落下速度の遅い枯葉はそのまま地面へと舞いながら落ちる。こうして赤、黄色、黒の実と、赤茶色の小石が残っていく。

この作業を午前11時まで続けると、コーヒー樹の木陰で弁当を食べる。豆を煮たフェジョンとご飯、豚肉とサラダが入ったアルミの容器を膝の上に乗せると、ニューバは両手の指を組み、目を閉じた。神と仕事と食事への感謝の祈り。ホベルトとニューバは起床、食事、就寝の前にこの祈りを行う。仕事が終わると、毎日午後7時から9時までは農場内の教会で過ごす。こうした時間を、2人は結婚してから持つようになったという。

6年前からジャカランダ農場で働いているホベルトは「この農場では、農薬を使ってないから、安心して働けます」と語る。以前、働いていた農場では、農場主の命令にはどうしても逆らえないため、危険だと分かっていても、農薬を使わなければならなかった。

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「ジャカランダコーヒー物語」

ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。

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