ジャカランダ農場のコーヒー園の中では、幼い子どもの声や歌が聞こえてくる。危険な農薬を使用するコーヒー園では、子どもの立ち入りを禁止するが、まだ学校に通う年令に達しないジャカランダ農場の子どもは、コーヒー園で父母と一緒に過ごすのである。
母リッタのエプロンの裾を握る4才のラファエーラは、歌を口ずさんでいた。途中、歌詞が分からなくなると作業を続けながらリッタがその続きを歌う。3年前からジャカランダ農場に移り住んだネルソンとリッタの夫婦は、「以前はこうして娘を連れてくることはできませんでした。まだ小さいこの子が側にいるので安心して作業ができます」と語る。
34歳のシーロの家族も同様に、次女パトリシアを作業場に連れてくる。シーロには、他に2人の子ども長女ミッシェリーと長男シジレイがいるが、日中はマッシャード市の学校に通っている。ジャカランダ農場の子どもたちは、カルロスの指示で、必ず学校に通うことを義務づけられ、学校を休んで農場の作業に関わることはない。
目次
「ジャカランダコーヒー物語」
ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。
- 第1話.カルロスの祖先から
- 第2話.カルロス・フェルナンデス・フランコの誕生
- 第3話.幼年時代、豊かな自然のなかで
- 第4話.父イザウチーノのコーヒー栽培
- 第5話.カルロスの原風景
- 第6話.初恋
- 第7話.青年時代、ブラジルの大河に橋をかける
- 第8話.ジャカランダ農場主として
- 第9話.農薬の到来
- 第10話.次女テルマからのレポート
- 第11話.カルロスと農場スタッフ
- 第12話.福祉活動との関わり
- 第13話.コーヒーの有機栽培へ
- 第14話.リスクを背負って
- 第15話.ジャカランダ農場が受けた被害
- 第16話.本当の豊かさを求めて
- 第17話.「幸運」な出来事
- 第18話.水俣病との出会い
- 第19話.無農薬野菜の産直運動
- 第20話.チェルノブイリ原発事故
- 第21話.病に倒れて
- 第22話.ブラジル、遠く広く
- 第23話.想いを全て伝えて
- 第24話.有機栽培の意味を実感するとき
- 第25話.苦境を越えて
- 第26話.視線は地平線の遥か遠くまで伸び
- 第27話.コーヒー樹に囲まれた生活空間
- 第28話.コーヒー樹を見守り続けて 〜現場監督 ニーノの仕事〜
- 第29話.労働のなかの静かな祈り
- 第30話.コーヒー園に響く幼子の声と歌
- 第31話.ジャカランダコーヒーの生豆、60キロの重さ
- 第32話.老いてもなお
- 第33話.夏の草刈り
- 第34話.日が暮れて
- 第35話.ある雨の日の事故
- 第36話.土曜の夜、協会で
- 第37話.ジャカランダ農場、故郷として
- 第38話.写真でたどるジャカランダコーヒーの旅路 -土から生まれて食卓に届くまで-