コーヒー豆の収穫は、毎年5月から始まり、9月頃まで続く。収穫されたコーヒーの実は、天日乾燥の後、脱皮機で外皮を削りとられる。残ったコーヒー豆は品質に応じて選別されてCF FRANCOと表記された60キロ入りの麻袋に詰められ、組合倉庫に搬入される。日本に出荷されるのはその後だ。
1997年の8月26日、その年に収穫された最初の60俵のコーヒー豆がジャカランダ農場から出荷された。
コーヒーを運ぶ方法は、人によって異なる。身体の線が細いネルソンは、背負うようにして担ぐ。
対照的に、首から肩にかけて豊かな筋肉を持つ27歳のアントニーノは、まるで布団でも担ぐかのように軽々とコーヒー豆を運んでいた。アントニーノは、生まれも育ちもジャカランダ農場で、7年前に、となりの農場で働いていたエリゼッチ(30)と結婚。長男のアントニーノジュニア(6)とまだ生後9か月のジュリアの4人家族。育児に手が放せないエリゼッチは、コーヒーの仕事に関われない。だから、アントニーノは、収穫作業をシルビオ(34)と一緒にする。
このシルビオもアントニーノと同様にジャカランダ農場で生まれ育った。コーヒーの他に有機バナナの栽培を担当しているシルビオは、「コーヒーよりもバナナの仕事の方が厳しい」と言う。現場監督ニーノの長女マリアと結婚し、14歳の長男ウエリントンと8歳の次男エリエルシオの4人家族。
目次
「ジャカランダコーヒー物語」
ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。
- 第1話.カルロスの祖先から
- 第2話.カルロス・フェルナンデス・フランコの誕生
- 第3話.幼年時代、豊かな自然のなかで
- 第4話.父イザウチーノのコーヒー栽培
- 第5話.カルロスの原風景
- 第6話.初恋
- 第7話.青年時代、ブラジルの大河に橋をかける
- 第8話.ジャカランダ農場主として
- 第9話.農薬の到来
- 第10話.次女テルマからのレポート
- 第11話.カルロスと農場スタッフ
- 第12話.福祉活動との関わり
- 第13話.コーヒーの有機栽培へ
- 第14話.リスクを背負って
- 第15話.ジャカランダ農場が受けた被害
- 第16話.本当の豊かさを求めて
- 第17話.「幸運」な出来事
- 第18話.水俣病との出会い
- 第19話.無農薬野菜の産直運動
- 第20話.チェルノブイリ原発事故
- 第21話.病に倒れて
- 第22話.ブラジル、遠く広く
- 第23話.想いを全て伝えて
- 第24話.有機栽培の意味を実感するとき
- 第25話.苦境を越えて
- 第26話.視線は地平線の遥か遠くまで伸び
- 第27話.コーヒー樹に囲まれた生活空間
- 第28話.コーヒー樹を見守り続けて 〜現場監督 ニーノの仕事〜
- 第29話.労働のなかの静かな祈り
- 第30話.コーヒー園に響く幼子の声と歌
- 第31話.ジャカランダコーヒーの生豆、60キロの重さ
- 第32話.老いてもなお
- 第33話.夏の草刈り
- 第34話.日が暮れて
- 第35話.ある雨の日の事故
- 第36話.土曜の夜、協会で
- 第37話.ジャカランダ農場、故郷として
- 第38話.写真でたどるジャカランダコーヒーの旅路 -土から生まれて食卓に届くまで-