第35話.ある雨の日の事故

マリアーノは、朝は7時にはコーヒーの天日乾燥場に姿を表す。と、その隣には彼の長男ジョゼ・マルコス(28)の姿がある。

マリアーノ、天日乾燥場にて
マリアーノ、天日乾燥場にて

その事故が起こったのは、1996年の4月、激しく雨が降る夜だった。ジョゼ・マルコスが運転する車は、トラクターと衝突した。命に別状はなかったものの、20日間の入院を終えて、農場に戻ってきたとき、彼の左腕は失われていた。

現在、ジョゼ・マルコスは残された右腕1本で、コーヒー豆の天日乾燥作業をしている。それをそばで見守るマリアーノは「ときどき落ち込んでいることもあるけど、ずいぶん立ち直ったよ。将来のことは少しずつ、話すようにしている。今のままでもかまわないけど、仕事については、これからもっと勉強して、机の上で仕事ができるようになって欲しい」と語る。事故当初、家族だけでなく農場のスタッフも彼を励ました。ジョゼ・ホベルトは「神様がついているから、前向きに考えるんだよ」と彼に語りかけたという。

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「ジャカランダコーヒー物語」

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