収穫時に必要な人手の確保やコーヒー豆の出荷手続きなどを担当するセバスチャンは、ジャカランダ農場のスタッフのなかで唯一、マッシャード市から車で通ってくる。
セバスチャンは24歳のときからジャカランダ農場で働いているが、カルロスの協力もあって、30キロ離れたマッシャード市に自分の家を建てることができた。さらに自分の3人の子どもを大学にまで進学させた。
このセバスチャンの義母ジョビッタも現在はマッシャード市の家に住んでいるが、若い頃は今は亡き夫と一緒にジャカランダ農場で生活をしていた。
生活の場を街に移すと、わずか30キロしか離れていないジャカランダ農場がとても遠くに感じるという。ジャカランダ農場はあなたにとって故郷のような所ですかと問うと、「いえ、天国のようなところです」と彼女は答えた。
ある日、カルロスはこのジョビッタを農場に招待した。そのときのことを、彼女は「夢のようだった」と振り返る。続けて「それでもジャカランダ農場に戻るとどうしても亡くした夫が想いだされて辛い」と語るのだった。
目次
「ジャカランダコーヒー物語」
ブラジルにて「不可能」と言われていたコーヒーの有機栽培を丁寧な土作りと「いのちを大切にしたい」という想いから成し遂げたジャカランダ農場。農場主の故カルロス・フランコさんとジャカランダ農場の軌跡をお伝えします。
- 第1話.カルロスの祖先から
- 第2話.カルロス・フェルナンデス・フランコの誕生
- 第3話.幼年時代、豊かな自然のなかで
- 第4話.父イザウチーノのコーヒー栽培
- 第5話.カルロスの原風景
- 第6話.初恋
- 第7話.青年時代、ブラジルの大河に橋をかける
- 第8話.ジャカランダ農場主として
- 第9話.農薬の到来
- 第10話.次女テルマからのレポート
- 第11話.カルロスと農場スタッフ
- 第12話.福祉活動との関わり
- 第13話.コーヒーの有機栽培へ
- 第14話.リスクを背負って
- 第15話.ジャカランダ農場が受けた被害
- 第16話.本当の豊かさを求めて
- 第17話.「幸運」な出来事
- 第18話.水俣病との出会い
- 第19話.無農薬野菜の産直運動
- 第20話.チェルノブイリ原発事故
- 第21話.病に倒れて
- 第22話.ブラジル、遠く広く
- 第23話.想いを全て伝えて
- 第24話.有機栽培の意味を実感するとき
- 第25話.苦境を越えて
- 第26話.視線は地平線の遥か遠くまで伸び
- 第27話.コーヒー樹に囲まれた生活空間
- 第28話.コーヒー樹を見守り続けて 〜現場監督 ニーノの仕事〜
- 第29話.労働のなかの静かな祈り
- 第30話.コーヒー園に響く幼子の声と歌
- 第31話.ジャカランダコーヒーの生豆、60キロの重さ
- 第32話.老いてもなお
- 第33話.夏の草刈り
- 第34話.日が暮れて
- 第35話.ある雨の日の事故
- 第36話.土曜の夜、協会で
- 第37話.ジャカランダ農場、故郷として
- 第38話.写真でたどるジャカランダコーヒーの旅路 -土から生まれて食卓に届くまで-