インタグの森に関する記述1
ニューヨーク植物園
1995年10月31日
関係各位殿
私はエクアドル、インバブラのインタグ雲霧林指定保護地区の重要性を立証するために、この手紙を書いています。私は1992年にこの特筆すべき地 域を実際に訪れました。また、私はこの地域を過去13年間に渡りしばしば訪れており、この地域全般について大変良く知っています。
西エクアドルの森林は、チョコ地方として知られる植物分布区域の一部で、非常に多様性に富み、かつ、重大な存続の危機にさらされている生息地です。実 際、チョコ地方は(その北部はコロンビアまで広がっています)全南アメリカで最も消滅の危機に瀕している二つの森林のうちの一つとして、世界の科学者の間 では広く知られています(もう一つは、ブラジル大西洋沿岸林)。エクアドルでは、これらの 西側の斜面の森林のうち手をつけられずに残っているのは、もとの広さの15%にもおよばないとみられています。
インタグ雲霧林指定保護地区の生物多様性は際立っています。絶滅の危機に瀕する多くの動物たち、メガネグマ、イワドリ、マウンテン・バク、クモザル、キ ミミオウムなどがこの森に住んでいることは、良く知られています。植物についても、 この湿気の多い1000ヘクタールの地域(様々な生態系を含み、高度の点でも 1700メートルから3600メートルと段階的に移り変わっている)は同様に豊かです。
インタグはチョコ地域内での生物学的比較研究というめったにないチャンスを与えてくれる土地です。私はこれを目的とした、この地での生物学研究ステー ションの設立が何にもまして優先的に取り組まれるべきだと思います。さらに有名なロス ・リオス・プロビンス南部のリオ・パランケステーションとの比較も興味深い結果を見せてくれるでしょう。インタグにステーションを設立した場合の科学的な メリッ トは、ひとまずおくとしても少なくとも、エクアドル人その他の生物学者、保護管 理論者のフィールドトレーニングの場としても同様の価値を発揮するでしょう。南アメリカの他の国々では、私有の森林保護区が、生物多様性の調査、教育、環 境保全そしてエコツーリズムの場として重要な役割を果たしています。
エクアドルは、公立並びに私有の公園や国有の指定保護区が、互いに緊密なネッ トワークを作っていることで国際的にも知られています。エクアドルの森林は北ア メリカやヨーロッパからのエコツーリストが好んで訪れる場所です。それはこの国がとりわけ、生物学的な多様性に富み、安全で、外からの訪問者を暖かく迎え 入れると信じられているからです。インタグの様な私有の保護区は、今後もエクアドルが海外からのエコツーリストを引きつけ続けるためには、不可欠の要素で す。また、これらの訪問者はこの国の経済に実質的に貢献しています。インタグは28あ るレッド・ナシオナル・デ・ボスケス・プリバドス・デル・エクアドルの支部の1つで、インバブラ県のたった2つの支部の1つです。カルロス・ソリージャ氏 はこ の新しいグループの副代表です。すでにインタグは、エクアドルの中でも最も素晴らしいエコツーリズムのための場所だという評判を得ています。
この森林のオーナーであり、かつ強力な擁護者であるカルロス・ソリージャ氏の特別の献身に触れることなくして、インタグの価値について語ることはできま せん。 カルロス・ソリージャ氏は、絶滅の危機に瀕するメガネグマの密猟者や破壊からこの森を守るために、ラ・フロリダの地域共同体と共に活動しているだけではな く、草の根の環境保護教育の大家でもあります。次元の若い人達で構成されている彼のグリーン・コープスは、他の地域でも模範とされるべきモデルプログラム です。
カルロス・ソリージャ氏はまたデコイン(デフェンサ・イ・コンセルバシオン・エ コロジカ・デ・インタグ)の設立メンバーでもあります。この組織はインタグ地方で今起こりつつある環境破壊を食い止めるために奮闘している組織です。デコ インは環境教育、原生林の管理保護、森林の再生、持続可能な土地利用システムの推進などの崇高な目標を持っています。これらの内容は、エドワード・O・ウ イルソン ハーバード大学教授が、彼の著書「生命の多様性」のなかで提唱されている「新環境保護主義」とも一致するものです。すなわち、環境保護と経済発展とは矛盾 せ ず、両方同時に可能であるという考え方です。デコインの努力のおかげで、持続可能な発展という考え方はインバブラ県の地域経済を今後末長く潤すもととなる でし ょう。
要約すると、わたしは、グリーンコープスやデコインのようなグループを組織してきた、カルロス・ソリージャ氏やその他のラ・フロリダの住民の皆さん、並 びに世界的にも注目すべきすぐれたエコロジカルな方法で、自分たちのすばらしい森林保護区を管理運営しているエクアドルの森林保有者を大いに尊敬している のです。
ニューヨーク植物園
1995年10月31日