西日本新聞で『考える絵本 しあわせ』が紹介されました

2011年1月26日(水)の西日本新聞に『考える絵本 しあわせ』が掲載されました。


以下本文

一杯のコーヒーから幸福を考える 
考える絵本「しあわせ」出版

 一杯のコーヒーから幸福について考える絵本「しあわせ」が大月書店から出版された。文章は明治学院大の辻信一教授、絵は漫画家の森雅之氏が担当した。B5変形判32ページ。1365円。

食や農、スローライフ・・・

 食や農、環境に配慮して、自然と調和した持続可能なライフスタイルを模索するスローライフ。その運動を展開しているNGO「ナマケモノ倶楽部」の世話人を務める辻氏が、同じく世話人の中村隆市氏をモデルに物語をまとめた。

 中村氏は、発展途上国の生産者を支えるために製品を適正価格で購入するフェアトレード(公平な貿易)を福岡県水巻町の貿易会社「ウィンドファーム」で実践している。「しあわせ」では、ブラジルで無農薬コーヒーを生産する農場主と中村氏の出会いなどフェアトレードが始められた経緯をベースに、物質的・金銭的な豊かさでは得られない幸せ、生き方について問いかけている。

 主人公は、女の子のマヤ。町でうわさの「しあわせコーヒー」の謎を知ろうと訪れたコーヒーショップで居眠り。夢の中で出会った木の精に、森を伐採して農薬を使う農場経営をやめて、農薬や化学肥料を使わずに、さまざまな種類の木々の間でコーヒーを育てる「森林農法」を取り入れた農場の歴史などを教えられるーというストーリー。

 農場で暮らす娘ロゼッタは、体に障害があるものの、家族が幸せなことを「だれもがもっている弱さをみとめあい、助け合い、足りないところをおぎないあう。そうなればみんなもっとしあわせになれるはずだ」と表現している。

 大月書店が子供向けに「こころ」「人間」「愛」などのテーマを分かりやすく解説した考える絵本シリーズの一つ。

【ナマケモノ倶楽部世話人・中村隆市のコラム】

カルロスさんとのフェアトレード『考える絵本 しあわせ』より抜粋

 今から12年前のちょうど今日、福岡のウィンドファームにエクアドル、ブラジル、コロンビアから有機コーヒー生産者や研究者が10人ほど集まりました。翌日に開催される国際有機コーヒーフォーラムに参加するために来日した人たちでしたが、その中に知らない人が2人いました。一人がアンニャ・ライト、もう一人が辻信一という人でした。
その日(98年11月13日)の出会いが、ナマケモノ倶楽部の誕生につながりました。
そんな記念日に、素敵な絵本を紹介できて幸せです。

★絵本『しあわせ』の出版に寄せて
カルロスさんとのフェアトレードが絵本になりました!
『考える絵本 しあわせ』(大月書店) 文 辻信一  絵 森雅之

 「農薬なしにコーヒーができるはずないじゃないか」と言われていた30年前のブラジルで、有機コーヒー栽培のパイオニアとして、試行錯誤を繰り返しながら無農薬栽培を成功させたジャカランダ農場のカルロスさん。そのカルロスさんとのフェアトレードが絵本になりました。

 カルロスさんは、今から7年前に75才で永眠されましたが、生前、ジャカランダ農場にはブラジル各地、中南米各国からも生産者や研究者が見学に訪れ、有機農学校の役割も果たしてきました。カルロスさんは見学者に対して、消費者と連帯することの重要性も語りかけていました。そして、フェアトレードでつながった消費者からのメッセージをうれしそうに紹介していました。

 逆に、見学者から学ぶこともありました。特に、エクアドルやメキシコの生産者や研究者と交流するなかで、森林農法(アグロフォレストリー)に興味を抱き、農場の中に植林する樹木を増やしていきました。この農法は、農場の生物多様性を豊かにしています。農場の名前に「ジャカランダ」という樹の名前を付けたように、カルロスさんは、子どもの頃から樹木が大好きでした。

 また、カルロスさんは自ら語ることは、ほとんどありませんでしたが、20代の後半から福祉活動に熱心に取り組まれ、ストリートチルドレン、一人暮らしのお年寄り、赤ん坊を抱えた少女たち、エイズの子どもたちなどの世話を続けてこられました。(1984年にサンパウロ市議会から功労賞を受賞)

 人も自然も大切にするカルロスさんが、1980年から無農薬栽培に切り替えた最大の理由は、「いのちを大切にしたい」ということでした。

 農場で働くスタッフと消費者の皆さんと土中の微生物や虫や小鳥も含めたいのちを大切にしたいという思いが無農薬栽培を成功させたのです。

 フェアトレードを通じてカルロスさんと共に歩んできた十年間は、いま思い出してもファンタジーのような特別な時間でした。カルロスさんが他界されたあと、ご家族から心に沁みるお話がありました。

 「パパは、亡くなるまでの最後の十年間、フェアトレードで日本とつながった十年間が最も生き生きしていた。とても幸せな人生だった」という皆さんの言葉でした。

 カルロスさんは、多くの人を幸せにした人でした。そして、幸せにしてもらったうちの一人が私でした。

 そんなカルロスさんと私たちのフェアトレードが絵本になりました。物語を書いてくれたのは、文化人類学者であり、環境運動家でもある辻信一さんです。十年前、辻さんをジャカランダ農場に案内しました。カルロスさんの案内で農場を見学し、土や自然の話を聞いて、食卓では、幸せについて語り合いました。
それが十年の時を経て、絵本になりました。

 みなさん、ぜひ読んでみて下さい。
 カルロスさんのご家族にも手渡そうと思っています。
 この絵本を読みながら、忘れかけていた大事なことを思い出しました。
 辻さん、素晴らしい絵本をありがとう。

ウィンドファーム 代表
中村隆市

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【追記】
カルロスさんのご家族に絵本を手渡しました。
シッキーニャ夫人、子どもさん6人全員とお孫さんにも手渡しました。
皆さん、絵本を手に取って「カルロスさんと再会しているような」しあわせそうな笑顔でした。


絵本に登場する“ペペさん”の妻(シッキーニャさん)


“ペペさん”の長男(エルマスさん)


“ペペさん”の孫(カシオさん) 現在、ブラジル有機コーヒー協会会長

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『考える絵本 しあわせ』出版記念イベント

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原画展(2)

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