ネパールとキムタン農園
ネパールは、中国とインドの真ん中に位置しており、多くの山に囲まれた自然豊かな国です。小さい国ながら、36以上の民族が住んでいます。
キムタン農園は、ネパールの首都カトマンズから約95km行ったところにあるヌワーコット郡キムタン村にあります。
村にはタマン族が住んでいます。タマン族は、昔は馬に乗ってチベットとネパールの交易を行う民族でしたが、現在は多くがヒマラヤに暮らしています。
キムタン農園を始めたケルン・タマンさんが、紅茶づくりを始めたきっかけは、1991年に世界的な紅茶産地として有名なダージリンへ見学に行ったことでした。
もともと紅茶が好きだったので、紅茶作りなら自分の村で、自然の中で家族と一緒に暮らしながら取り組めると思い、家族や親族15人で一緒に紅茶を作ることに決めました。
こうして、キムタン村で310坪の紅茶農園をスタートさせました。高齢になった現在、農園のことは息子のイサックさんに任せています。
イサックさんは、地域の人々に紅茶づくりを教えながらワークショップも行っています。キムタン農園は、キムタン村における初めての紅茶農園なので、そのお茶づくりを見学したいと周辺の村から多くの人々が集まります。
またイサックさんは、他の地域に出て、自分の作った紅茶を試飲してもらいながらいろいろなところへ紅茶を卸しています。この他イサックさんは、地域にある教会の若者グループの代表としても活動しています。
ネパールでは、外国へ出稼ぎに行く若者が多い中、紅茶を栽培する理由を尋ねると、イサックさんは、「家族を大事にしたいんです。この地域で出来ることをしながら、幸せな人生を過ごすことが一番だと思っています。」と答えていました。
イサックさんは、仕事がない若者に農園で働く機会を与えたり、アグロフォレストリー(森林農法)や有機栽培なども勉強しながら、美味しい紅茶を栽培しています。
キムタン農園独自の紅茶づくり、そしてチャレンジ
標高1,600m〜2,000mに位置しており、高山特有の気候が高品質のお茶を作り出しています。
ここでは、一般的な紅茶と違い特徴的な紅茶づくりをしています。他の紅茶農園は、茶葉を収穫する時、若い新芽を全部摘みます。
しかし、キムタン農園では、枝から二組の葉っぱが出ている若い枝のみを収穫し、一組しか出ていない場合は摘まずにおいておきます。そうすることで、非常においしい紅茶ができるといいます。
また、他の紅茶農園では、茶葉を柔らかくするために電気ヒーターなどを使用しますが、キムタン農園は、炭火でその作業を行なっています。こうした炭火には、森の中で出た枯れ枝などを使っています。
キムタン村で紅茶を栽培することで、地域の女性たちにも多くの雇用機会がうまれています。 一般的にネパールでは、家族の一人(父親)だけが外で稼いで家計を支えています。その状況だと、日常生活で必要なものもなかなか買うことができません。
しかし、女性も仕事ができるようになり、子どもたちに教育を受けさせることができるようになりました。
キムタン村は、山岳地域のへき地とも言える村で、夏は首都のカトマンズから一日一台バスが出ていますが、村までの道路は舗装されていないため、梅雨の時期には雨と土砂崩れで道路が遮断されます。
こうした大雨や土砂崩れによって停電が引き起こされることもしばしばです。また、村では道路事情だけではなくネット環境もよくありません。
美味しい紅茶を生産できても、ネットによって市場開拓を行うことが難しいため、なかなか販売先を見つけることができません。
ネットが通じにくいことで、私もキムタン農園の皆さんとやりとりすることも結構難しいのですが、キムタン紅茶を日本で販売することで、生産者の方々の役に立てたらと思っています。
電話もなかなか繋がらないのですが、通じた時には皆さんの悩みなどをたくさん聞いて、紅茶を販売していくための方法などを一緒に考えています。
キムタン紅茶物語 目次
2020年、ウインドファームに入社したネパール出身のタマング・スーザン。
来日した時の夢は、日本でお金を稼いで豊かな生活をすることでしたが、日本で色々な人との出会いを経て少しずつ自分の考えが変わってきたといいます。
「入社して、フェアトレードや有機栽培、アグロフォレストリーについて学び、自分のできることから世界を変えようとしている仲間たちに出会うことを通して、ようやく自分がしたい仕事のかたちが見えてきました。」
現在、ウインドファームで、ネパールと日本をつなぐ架け橋になるべく、日々仕事をしているスーザンが紡ぎ出す紅茶のフェアトレードの物語です。
第4話 8年半ぶりのネパール、そしてキムタン紅茶農園への訪問