こんにちはスタッフのタマング?スーザンです。今回はネパールでキムタン紅茶を栽培しているタマング族の生活文化をお伝えします。ネパールの多民族の中でも、タマング族は昔からコミュニティを中心に、大勢で支えあって暮らしてきました。
出産も、家づくりも、みんなの力を合わせて
出産も地域の女性たちが協力しながら、それぞれの家で行います。私の場合は、畑でした。母が畑で作業をしているときに産気づき、女性たちが集まってそのままそこで生まれたそうです。
家造りもみんなで行います。皆さんはアリが共同作業で自分たちの住む家を造っているのを見た事ありますか？アリは土をほって、自分の体より大きい土の粒をひとつひとつ外に運んで、家を造ります。
タマング族もアリと同じように、まわりの人々が自分のできる事を出し合って家を建てていきます。力のある人は現場に出て、物(野菜、米、油)を持っている人はそれを提供して手伝います。
特に家の基礎を築く日と、屋根を仕上げる日は、村の皆が手伝いに行きます。困った時にすぐに助けられるように、家は隣り合わせで建てることが多いです。家が完成した日には、水牛を解体して皆でお祝いのパーティをします。
必要なものは自然からの授かりもので作っていく文化
衣食住について、タマング族は昔から自給自足の暮らしをしてきました。羊の毛から糸を作り、その糸から服や布団なども作ります。限られた谷間のスペースに田畑を作り、米、野菜、ハーブ、小麦、ジャガイモなど栽培してきました。各家庭でそれぞれの家の前に小さな畑があり、季節毎の野菜を作ります。
そして、農作業も共同で行います。例えば田植えの時は、性別に関係なく子どもも大人も手伝って、一人の家の作業を終わらせます。そして順番に他の家の作業に、みんなで取り掛かっていきます。作業の日はその家の主人が、手伝いにきてくれた人のためのチャムレ(茶飯)とチャイ(紅茶)を用意します。作業中でも少し酒を飲んだりする人もいます。田植えの日は皆で美味しい米の栽培を祈願して恵の歌（サイコーレ?）を歌います。
山で過ごす家畜たちとの日々
村の敷地内になるべくたくさん家を建てるために、羊やヤギ、水牛や牛などの家畜は、村から離れた山奥で飼育します。ヒマラヤの国なので冬には当たり前のように雪が降ります。雪が降ると動物たちは山に住めなくなるので、村人たちは動物を連れて村に移動します。
山の放牧地で家畜と一緒に暮らす時は、山に自生する芋や野草、罠で捕まえた鳥や動物を食べます。それらは全て自然のものなので、健康にはとても良いのです。急なケガや病気の際にも、山で簡単に手に入るハーブで病気を治します。
経済的なことについても、助け合いを大事にするこの民族は、何らかの理由でお金を払えない時には、お互いに差し出しあって解決します。
歌声と泣き声で魂を送り出すお葬式
タマング民族には他の民族と違がって不思議な事がたくさんあります。人間は生まれて来ていつかこの世界を離れます。大事な人が亡くなった時、タマング族のお葬式では、泣き声が歌のように聞こえます。亡くなった人のこと想って歌いながら泣くのです。その言葉を聞いている人も、その言葉につられて泣き出します。
さらにもっと不思議なことに、仏教のタマング族の死体はチベット文化と同じく、鳥葬することです。20年前までは、亡くなった人の遺言に従って、死体を鳥に食べさせていました。現在この文化はめったに目で見ることはありません。
地域の身近な人々に囲まれて生まれ、力を合わせて生きていくために必要なものを育み、作り出し、そしてまた親しい人々の歌と泣き声に包まれて、この世界を離れていく。そんな営みが、タマング族の生活文化の根底には流れているのだと思います。（文：ウインドファームスタッフ タマング・スーザン）
キムタン紅茶物語 目次
2020年、ウインドファームに入社したネパール出身のタマング・スーザン。
来日した時の夢は、日本でお金を稼いで豊かな生活をすることでしたが、日本で色々な人との出会いを経て少しずつ自分の考えが変わってきたといいます。
「入社して、フェアトレードや有機栽培、アグロフォレストリーについて学び、自分のできることから世界を変えようとしている仲間たちに出会うことを通して、ようやく自分がしたい仕事のかたちが見えてきました。」
現在、ウインドファームで、ネパールと日本をつなぐ架け橋になるべく、日々仕事をしているスーザンが紡ぎ出す紅茶のフェアトレードの物語です。
第4話 8年半ぶりのネパール、そしてキムタン紅茶農園への訪問
ネパール キムタン農園の紅茶
