こんにちは。ウインドファーム、スタッフのタマング・スーザンです。2022年9月、私は8年半ぶりに故郷ネパールに帰国し、キムタン紅茶農園を訪問しました。
豊かな自然に囲まれたキムタン紅茶農園
朝、降りしきる雨のなか、カトマンズから車で出発しました。都市を走り抜けると、窓からはネパールならではの景色がたくさん見えてきます。窓を開けると、山の匂いや収穫前の稲の甘い香りが漂ってきました。
夕方、キムタン村に着いて車を降りると、キムタン紅茶農園のケルンさんと息子たちが笑顔で出迎えくれました。ケルンさんの自宅の周囲には、様々な動物や植物など、豊かな自然が溢れています。色々な花が咲いている庭には蜜蜂の巣も置いてありました。
ケルンさんは私に紅茶(チャイ)を出してくれました。それは日本で飲んだ紅茶よりも美味しく感じました。ケルンさんは紅茶栽培ついての話をしてくれます。私も有機農業、森林農法、フェアトレードのことを説明しました。
自給自足的なケルンさんの生活空間
話の途中で動物の鳴き声が聞こえて見に行ったら、鶏がさばかれていました。その日の夜には、ネパールの豆のスープ(ダルバート)と鶏のカレーを美味しくいただきました。ケルンさんの生活スタイルを見て、自給自足は本当に楽しく、そして大事だと思いました。
世界中に新型コロナが広がった時、ロックダウンで店が閉まり、お金を持っているのに食べたい物を買えず、自分の食べるものを自分で作ることが大事だと思いました。いつ、どこで何起きるか、どんな自然災害が起きるか分からないこの世界では、自給自足のライフスタイルはとてもよいと思います。
翌朝、キムタン村の山から昇る朝日で、村全体は黄金色に輝きます。それはまるで天国のようでした。そして鳥たちのなき声を聴きながらみんなでチャイを飲みました。その日の朝は本当に幸せを感じました。
キムタン紅茶農園と製造工場の見学
朝ごはんを食べ終えると、紅茶農園の見学が始まります。紅茶栽培は、丸ごと一つの山で行われていました。農園の周りをシカが走っている景色は印象的でした。
ピカピカに光る茶葉の手摘み作業は、山の麓から始まり、山の頂上に着く頃には、最初に収穫した木に付いた新たな茶葉が収穫されるようになるそうです。今は農園が広がり、年間を通していつでも茶葉を収穫できるとのことでした。
農園の見学の後、紅茶の製造工場に向かいました。工場の中には5台の機械が置いてありました。その中の1台は、電力不足のため使われていませんでした。今後その機械を使ってもっと品質の良い紅茶を作る予定ですが、ケルンさんは機械を動かすための電力を得るため、国の様々な機関に働きかけているそうです。
慎重かつ丁寧に行われる紅茶の発酵作業
今回の工場見学を通して、一番印象に残ったことは、紅茶の発酵作業でした。その作業においては、工場内に匂いを一切持ち込んではいけないのです。作業する人は香水も付けません。なぜなら発酵している紅茶は、周りの匂いをすべて吸収してしまうからです。そのため、発酵作業中、作業する人はシャワーを浴びて、きれいな作業服を着ることになっています。紅茶の発酵作業はとても慎重に行われていました。
キムタン紅茶農園との別れの時間、ケルンさんは自分の紅茶が日本に届くようにしてくれた事にたいして、自分の帽子を外しておじきしながら感謝します。私は自分より年上の人がこうやっているのを見て、自分がした小さい事でも誰かがこんなに喜んでくれていることを実感しました。
私はケルンさんと抱き合い、これからももっと紅茶を日本で販売できるように頑張ると約束しました。
日本でどんな仕事でもとにかく頑張って、お金を稼いぐことを夢見て日本に来た私ですが、そんな自分が変り、キムタン紅茶のフェアトレードを始めてよかったと感じました。この仕事を通して、困っている人々を助ける仕事は何よりも幸せだと感じます。これからもネパールの人々を助けながら、ネパールの有機農産物をフェアトレードを通して日本の方々に楽しんでもらいたいと思います。 (文:ウインドファームスタッフ タマング・スーザン)
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キムタン紅茶物語 目次
2020年、ウインドファームに入社したネパール出身のタマング・スーザン。
来日した時の夢は、日本でお金を稼いで豊かな生活をすることでしたが、日本で色々な人との出会いを経て少しずつ自分の考えが変わってきたといいます。
「入社して、フェアトレードや有機栽培、アグロフォレストリーについて学び、自分のできることから世界を変えようとしている仲間たちに出会うことを通して、ようやく自分がしたい仕事のかたちが見えてきました。」
現在、ウインドファームで、ネパールと日本をつなぐ架け橋になるべく、日々仕事をしているスーザンが紡ぎ出す紅茶のフェアトレードの物語です。
第4話 8年半ぶりのネパール、そしてキムタン紅茶農園への訪問