第2話 「森を守る紅茶と生物多様性」

 ウインドファームがフェアトレードで取り扱っている「オーツ農園産・南インド紅茶」は、「森を守る紅茶」と言うことができます。コーヒーの森林農法は森の中にコーヒーの樹を植えていきますが、オーツ農園は今ある森を切り開かずに保全するというスタイルで森と茶園を共存させています。

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 具体的には森のゾーンと茶園のゾーンが別々になっているのです。一部はその土地固有の樹木が生えている原生林だと言います。地形を活かして、作業効率も考慮しながら茶園が作られています。これは、広大な山を丸ごと活用しているためにできることです。原生林や薪などを取るための植林された森を合わせて敷地の75%ほどが森で、残りの25%が耕作地となっています。現地に立って見ると広大な茶園の後方にさらに広大な森があるという風景です。

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 この森があることの意義はとても大きいものです。ひとつは、生物多様性が豊かであるということです。ウインドファームスタッフが2009年に農園に滞在した時にも多様な動物に出会いました。

街から農園に向かう途中、大きくトラの絵が描いてある門を通過します。「ここからは、国有のトラの保護区なんです」と案内をしてくれたラムさんは語ります。「トラに出会ったらどうしたら良いのでしょう?」と万が一のことをコチラが聞くと「おとなしく座っていることですね。走って逃げたりしたら、食べられちゃいますよ。ま、トラを目撃することはほとんどないですから、もし会えたらそれはそれでラッキーですよ」と。

麓からの真っ暗闇の道のりを夜間に1時間ほど車で進む間に、私達はたくさんの野生生物に出会いました。ラムさんはかなりのスピードで山道を駆け上がっていくのですが、車の前にいろいろな野生動物が現れてくるのです。

まずはマングース。大きな猫ぐらいの姿でした。そして、大きな角を持ったサンバー(水鹿:日本で言うヘラジカのようなもの)。足先が白く「白い靴下をはいているみたいだったでしょ」と言われるバイソン(水牛のようなもの)。車のライトに眼がくらむのでしょうか、しばし立ち尽くしていましたが、すごい迫力でした。そして、何とクマにまで遭遇。黒い毛のクマがノソノソと道を横切って行きました。「クマを見たのは私も初めてです。だんだん動物が大きくなって来たから、次はゾウが出てくるかもしれませんよ」とラムさん。大きなバイソンとサンバーには2度遭遇しましたが、残念ながらトラとゾウには会いませんでした。

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ラムさんが提供してくれた農園に現れる動物たちの写真

 

農園滞在中には、イノシシの親子、クジャク、野うさぎ、かなりの種類の鳥にも遭遇。早朝には遠くで「ホゥホゥホゥホゥ」とサルの鳴き声も聞こえていました。

現地のスタッフが遭遇した野生生物の記録ノートには次の記述があります。

「トラを見た」

「夜8時に象が道を横切っていた」

「夜11時にシカに遭遇」

「午後7時、野生のクマに遭遇」

「夜7時半に2匹のパンサーが道で遊んでいた」

「サンバーに遭遇」

「ジャガーを見た」

「2頭のイノシシが歩いていた」

「3頭のサンバー(水鹿) 家族だと思われる」

「ベルベットグリーンのハト3羽」などなど。

農園関係者によると「鳥類だけでも数百種はいるんじゃないかしら?あまりにたくさんの種類がいるから数えようとも思わないけどね」とのこと。

大型の動物だけではなく、色とりどりの花やシダ類などの植物や昆虫等の小動物の多様性も豊かです。これも森が残されていることで受けられる恩恵と言えるでしょう。

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しかしながら、農園では苦労もあります。「バイソンが農園に入ってしまうと、お茶の樹が痛むんだよね。樹を折ってしまうこともあるからねぇ。ゾウが出ると、労働者も逃げてしまうから仕事にならないよ。ゾウは場合によっては凶暴なので、注意が必要なんですよ。ヘタをすると死者がでるぐらいですよ」とラムさん。

 

広大な森に囲まれた茶園で有機栽培を展開することは、野生生物の住処を保全しながら、安心出来る農業を営むことにつながります。「実感として有機栽培を推進しはじめてから野生生物の数が多くなった気がするんです。これはとても嬉しいことだし、有機栽培プロジェクトのひとつの成果だと思っています。こういった有機栽培をより推進していきたいですね。そのためには、日本でももっと飲んでもらえると良いですね」とラムさんはニコニコ笑いながら語ってくれました。

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