干潟を利用した天日塩<韓国 新安郡>

海・風・太陽の織りなす贈り物

「天日塩(てんぴえん)」とは、太陽と風のちからで海水をゆっくりと蒸発させて出来た塩の結晶のことです。

韓国新安郡の多島海で作られています。

干潟によって豊かな生物多様性が守られているこの地域は、ユネスコの生物圏保全地域に指定されていましたが、2021年7月に、はれて世界遺産に登録されました。

干潟を利用した塩田は家族経営的にいとなまれており、環境を保ちながら自然の恵みと人力による作業で製塩されています。集められた塩はその後、木造の倉庫の中で1年の熟成期間を経て、旨味と甘味のある天日塩に仕上がります。

天日塩ができるまで

1, 干潟を利用して作った塩田の区画に海水を引き込みます。15日間ほどおき、泥などを沈殿させます。

2, 沈殿作業の後、別の区画に海水を移動させます。太陽光と風を利用して水分を蒸発させ、塩分濃度を高めて潅水をつくります。

塩田の区画を分ける畦道も、すべて手作業でつくられています。釘は1本1本人の手で打たれ、錆びにくい特種なものが使われています。

3, こまめに塩分濃度を測り、濃度が高くなれば次の区画に海水を流します。濃度が天日塩作りにおいて大切なポイントなのです。

4, 塩分濃度が高くなるに応じて、次の区画に海水を流して移動させます。そして、最終区画に潅水を流す判断には、これまでの経験と知識が求められるため、専門の職人に委ねられます。

最終区画に流す潅水の条件は2つあります。
 ・塩分濃度が24度
 ・3日後に採塩が可能となること

潅水は、塩分濃度27度で結晶化が始まり、30度で採塩すると最高級の天日塩ができるとされます。
塩分濃度が24度の潅水を3日後に30度の濃度に高めて採取した天日塩が、甘味があり最もおいしいそうです。
そのため、3日間の天候や湿度を考慮して、最終区画に流す潅水の量を決めます。

5, こうして採塩した天日塩から余分な水分を落とすために、1カ所に集めて山にします。まだ湿っている塩をスコップで集める作業は大変な重労働です。

6, 塩倉庫まで運ぶために、トロッコに集積して移動します。

7, さらに300Kgの塩を倉庫の奥まで押していきます。

8, 木造の塩倉庫で保管される天日塩からは、ニガリ成分がゆっくりと落ちていき、ミネラルなどが凝縮された甘味のある美味しい塩となっていくのです。