東ティモールは、2002年にインドネシアの占領から独立した東南アジアにある小さな国です。豊かな自然あふれる山々に囲まれた標高約1,500メートルのマウベシ郡は、美しい空気と水に恵まれ、さまざまなハーブが自生している地域です。
現地の人たちは、こうしたハーブを、体調に合わせて食べたり、煎じて飲んだりと、古くから日常的に伝統薬として利用してきました。そのハーブをハーブティーとして加工し、販売する取り組みを始めたのが地元の女性グループ“Hanoin Ba Oin”(ハノイン・バ・オイン)です。“ハノイン・バ・オイン”は、現地の言葉で「前向きに考えよう」という意味があります。
元々“ハノイン・バ ・オイン”の女性たちは、ティモンコーヒーの生産者グループ、マウベシ農業協同組合COCAMAU(コカマウ)のメンバーでした。そこでは、コーヒーを加工する量によって収入のほとんどが決まります。
女性たちは、家計を助けようと他の収入源を模索する中で、ハーブティーの生産・販売を始めることにしました。ハーブティーの加工は単に収入をもたらすだけではなく、その活動によって女性たちの経験や能力も向上していくことにつながっています。そして現在、このハーブティー加工の取り組みは、近隣の村の女性グループにも広がっています。
採取されたハーブは太陽の恵みをたっぷり受けて自然乾燥されます。その後の一連の加工作業には繊細さが求められますが、すべてが手作業で行われ、しっかりとした技術と知識により香り豊かなオーガニックハーブティーに仕上がります。
その“ハノイン・バ・オイン”のコーディネーターを務めているのは、アンジェリーナさん。アンジェリーナさんは、東ティモールで支援活動を続けている日本の特定非営利活動法人パルシックの現地事務所とともに活動しています。パルシックは、2005年にマウベシ郡の女性グループとハーブティーなどの生産に取り組み始めたのですが、そのスタッフから「アンジェリーナさんの強い情熱とリーダーシップ、そして皆をまとめていく力がなければ、これまでグループを続けてくることは難しかった」と言われるほど、アンジェリーナさんの働きはとても大きいものとなっています。
グループの活動が始まって、20年近くになりますが、その間、アンジェリーナさんを中心とする女性たちの取り組みは、この地域に暮らす女性たちに収入や自信をもたらしています。