エクアドル
エクアドルの概要
国の面積は約26万平方キロ(日本の本州とほぼ同じ大きさ)。人口はおよそ1265万人(このうち先住民族が30%を占める)。国名である「エクアドル」はスペイン語で「赤道」を意味し、国は文字通り赤道直下に位置している。
国土が海岸部の低地からアンデスの高地に至るこの国は、「エル・オリエンテ(アマゾン地方)」、「ラ・シエラ(アンデス地方)」、「ラ・コスタ(海岸地方)」、そしてガラパゴス諸島の4つの気候区分に分けることができる。面積は小さいながらも、その地理、地形そして生物の多様性は類いまれな豊かさを誇る。また、九もの先住民族が織りなす文化の多様性も計り知れない。
デコインでは、具体的にどんなことをしているの?
インタグ地区の環境保護団体であるデコインは、カルロスの提案によって出来上がってきたのですが、その活動の一つに小規模水力発電があります。これは、中古品を利用して作っているので、市販されている物の20分の1くらいの費用で作ることができました。また、環境教育にも力を入れています。子どもたちに絵を描いてもらい、その中で優れた作品を描いた子どもは、その褒美として、環境にやさしい取り組みをしている村に勉強に行くことができるのです。そして、勉強を終えて帰ってきた子どもたちは、学校や家庭に戻り、村の生活、自然の様子などを話します。これを通して、大人も含めた環境教育が広がっていっているのです。そして、鉱山開発をくい止めるために重要なのが、コミュニティによる森林の買い取り運動ですが、デコインは、その活動も支援しています。こうした小さな積み重ねによって、デコインという団体が育っていくとともに、インタグ地区の多くの人の環境意識が高まることとなったのです。ただ、活動資金が不足しているために、活動が制限されています。 (中村 隆市)
アグロフォレストリー
森林農業ってどんなの?
一般的に、コーヒー豆は、森林を伐採し、そこにコーヒーの木だけを植えて栽培するという方法を取ります。しかし、インタグ地区の場合は、森林を残したまま、その間にコーヒーの木を植えて栽培するというかたちを取っています。そこでは、バナナ、オレンジなどの熱帯果樹や樹木、あるいは野菜などとの混作が行われているのです。こうした栽培方法(アグロフォレストリ)は、コーヒーが分散していて、作業も収穫も手間も掛かります。しかし、多様な作物を栽培しているため、いくつかの作物が不作だったり販売価格が暴落しても、他の作物でやっていける可能性が高いわけです。場所によっては、アグロフォレストリシステムを取っているところの方が一般的な森林よりも多様性がある場合もあります。生物多様性を守るためには、とても優れた農法なのです。 (カルロス・ソリージャ)
村から都市へ出ていった人たちの貧困の問題について
インタグ地区の住人は、70年くらい前に移住してきた人が多いのですが、エクアドルでは、鉱山開発などの大規模開発によって村の生活が成りたたなくなり、人々が都市へ流れていくということも見られます。また、これまでの農業(伝統的なアグロフォレストリなど)とは異なる近代的農業、森林を伐採し、農薬や化学肥料に依存した農業が広まりを見せています。これを、環境を守るような農業に変えていきたいというのも、カルロス氏ら(デコイン)の活動の一つでもあります。 (中村 隆市)
農業に従事していたが、やっていけなくなったから、ということで都市へ出ていってしまう。こうしたことから、都市の貧困の問題が生じています。私たちは、有機栽培のコーヒー生産に取り組んでいますが、これと同時に、このコーヒーが公正な価格で取引されるようになれば、都市へ流出する人も減り、村(もともとの土地)で生活できるようになるのではないか、と私は思っています。つまり、「フェア・トレード」が世界中に広がれば、農民たちも村で生活し続けることができ、貧困の問題を改善することができるのではないでしょうか。「環境保護」と「フェア・トレード」のつながりはどうなっているか、と言いますと、例えば、私たちのコーヒーを日本に輸出し販売することで、その内の5%が自動的にデコインに入ることになります。この資金があることで、私たちは環境保護の活動を続けていくことができるのです。 (カルロス・ソリージャ)
日本による債務が引き起こす問題
エクアドル政府には、環境よりも経済優先という考え方がありますが、この理由の一つに対外債務(外国からの借金)の問題があります。日本の税金や郵便貯金などは、途上国への「援助」として使われています。「援助」というと聞こえはいいのですが、日本の「援助」の半分は利子も含めて返済しなければならない「有償援助」です。「援助ビジネス」などともいわれますが、その「援助」という名で実際に行われるのは、現地の民衆が望んでいない飛行場や道路やダムなどの建設です。しかもその建設工事は日本の建設会社が請け負い、お金が日本に戻ってきます。にもかかわらず、「援助」を受けた途上国は、利子を含めた借金を返していかなければなりません。そのために、本来なら、人びとの医療や福祉や教育に使うべきお金まで借金返済のために使われることが多いのです。
エクアドルの場合は、国家予算の半分が借金の返済に充てられています。そのために、鉱山開発や石油開発といった自然破壊型の開発を受け入れることが多いのです。 (中村 隆市)
エクアドルの政府が、容易に大企業や開発を受け入れてしまう理由は、対外債務の問題があります。政府にとって良いものでも、コミュニティには何ももたらすことはないのです。また、世界銀行はエクアドル全域において、銅山開発のための資金を提供しようとしていました。銅山だけではなく、国立の保護区の森林までも伐採し、金など他の資源も搾取してエクアドルから去っていくといったプロジェクトが多いのです。先進国の大企業は、自国の資源が利用できなくなったために、世界銀行などから資金を得て、途上国へ入り込んで安い資源を搾取する。これは、グローバリゼーションがもたらした悪い点であると思います。 (カルロス・ソリージャ)
フェアトレードの理想と現実
「フェア・トレード」には、南と北の経済格差を縮める、また環境を保全していく、という目的があります。昨年と今年の国際市場におけるコーヒーの価格は、今、私たちが購入しているコーヒーの価格の3分の1です。私たちは、国際的なコーヒーの相場よりも3倍近い価格で買っているのです。生産者と相談した上で、その価格が、最低限の生産原価だと考えています。つまり、一般のコーヒー生産者は、その3分の1しかもらうことが出来ない、ということなのです。例えば、世界最大のカフェであるスターバックス社は、以前はフェア・トレードのコーヒーは、いっさい扱っていませんでした。しかし、フェア・トレードのコーヒーを扱うべきだ、という世界的なプレッシャーによって、スターバックスは、こうしたコーヒーを扱うようになりました。これ以後、「スターバックスは、フェア・トレードのコーヒーを扱っています」といったことを宣伝し始めましたが、その扱っている量というのが、全体の0.1%以下であるということがわかってきたのです。こうした企業の考え方や姿勢を変えていくのは、一般市民だと思います。コーヒーを飲む皆さんが、どうせ飲むんだったら、環境保護につながったり、適正な価格で購入されているコーヒーを購入していただきたい、というのが私の願いです。 (中村 隆市)
現地の要望、提案をふまえて
・日本の政府が、鉱山開発のような環境破壊や地域住民の文化、生活を脅かすような開発に支援をしないようにしてもらいたい。そして日本国民が政府を止めるということをしなければならない。
・日本にいる私たちの生活が、途上国の人々の生活とどうつながっているのか、ということ考える。我々の生活は、大量生産、大量消費だというが、その前に、「(資源の)大量採取」という問題がある。途上国から大量の資源を持ってきている。我々の生活を見直す必要がある。大きなことではなくても、我々にできることがある。 (西南学院大学教授 吾郷健二)
フィエスタ・エクアドルに寄せられた感想
前略、先日フェイスタ・エクアドルに参加させていただきました。すごく感動しました。エクアドルの豊かな自然、優しい人たち、心に響く音楽・・・。日本から遠く離れた南米の地がとても身近に感じられるようになりました。そして、愛おしく感じられるようになりました。
カマキリのスライドを見たとき、なぜか目頭が熱くなりました。日本にもカマキリ がいるのに、なぜあれほど心を動かされたのか自分でも不思議でした。かつての日本にも、今のエクアドルと同じように、いろんな生き物がいたのでしょう。「みんな何処に行ってしまったの?」カマキリのつぶやきが聞こえたのかもしれません。
「環境保護」、「生物多様性」、「持続可能な発展」等々、難しい言葉が増える一方、 「環境破壊」はますますひどくなっています。今回、生まれてはじめてエクアドルの人々と出会い、その思いに触れて感じました、必要なのは難しい言葉ではなく体験だと。
いっしょに歌った”イマジン”、最高でした。 コーヒーを深く味わうようになりました。カマキリを見る目が変わりました。残るは自分自身の価値観や生き方を変えることだと思います。ナマケモノのようにゆっくり自由に生きていきたいです。素晴らしい機会を提供していただき、本当に有り難うございました。悲しいニュースにふさぎがちな毎日、未来に希望を見出せる貴重なイベントでした。エクアドルと日本での試みが成功することを切に願っています。
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